第2話 神々との出会い
「あ、あれ? ここは、何処だ?」
気がつくと、春風は何も無い真っ白な空間に立っていた。
立っている感覚はあるが、前後を見ても、左右を見ても、そして上下を見ても、真っ白だった。
建物も無く、木や草も石ころさえも無く、鳥や動物どころか蟻一匹すらいなかった。
「おーい、誰か居ませんかー?」
と、春風はそう叫びたかったが、何となく恥ずかしい気がしたのでやめた。
仕方ないと考えた春風は、取り敢えず今の自分の格好を確認した。
まず、顔にはいつもかけている伊達メガネがある。これは普段から目立たないようにする為だ。
次に、今、自分が着ているのは、通っている高校生の制服だ。
上は白いワイシャツに紺色のブレザーで、ネクタイは赤。ブレザーの左胸の部分には「常陽学園高等学校」の刺繍が入っていて、内ポケットには自身の学生手帳が入っている。右の袖を捲ると、腕の肘から手首にかけて包帯が巻いてある。それは、2年前の「あの日」から、ずっと巻き続けてきたものだ。
下は灰色のズボンで、右のポケットには最新のスマートフォンが入っていた。電源は入るが、画面右上には「圏外」の文字がついていたので、春風は溜め息を吐いた。そして、左ポケットはというと、普段は財布を入れていたのだが、今日は鞄の中だったので、春風はさらに溜め息を吐いた。
その時、
「あ、そうだ!」
と、ある事を思い出した春風は、慌てて自身の首筋に手を当てた。
「よかった。
それは、高校の入学祝いとして春風が「師匠」と呼ぶ女性から、「お守り」としてプレゼントされたネックレスだった。そのネックレスには、小さな赤い宝石がついた銀製の指輪がついていた。
ここまで確認すると、春風は漸く全てを思い出した。
「そうだ、俺はあの変な光に飲み込まれそうになった所を助けられたんだ。先生やクラスの皆は、どうなったんだ?」
春風がそんな事を考えていた時だった。
「どうやら、全部思い出したみたいだね」
突然、女性の声でそう言われた春風が、ハッと目の前を見ると、そこには20代くらいかと思われる、白い長袖のワイシャツと青いジーンズ姿の、1人の女性と2人の男性が立っていた。因みに、3人とも裸足だった。
3人をよく見ると、女性はかなりの美人で、腰まで届く長い黒髪を1つに束ねていて、気が強そうな印象の目付きだが何処か優しそうな雰囲気も出していた。そしてスタイルも結構良くて、ワイシャツは下の方のボタンが外れていて、おへそがチラリと見えていた。
次に2人の男性だが、1人は「ワイルドなお兄さん」を思わせる厳つい顔付きで、褐色の肌に短くカットされた白髪と鋭い目付きがカッコ良さを際立たせている。さらにボタンを全部外したワイシャツの下は無駄のない筋肉が付いた胴体が見えたので、春風は思わず心の中で、
(か、かっこいい)
と、呟いた。
もう1人は「クールなお兄さん」を思わせる全体的に知的な雰囲気を出していて、女性と同じ黒髪をオールバックにしていて、右目に黒い眼帯をかけているがそれが気にならないくらいに整った顔立ちをしている。因みに、ワイシャツのボタンは全部閉じている。
「あ、あの、どちら様でしょうか?」
恐る恐る尋ねる春風に、まずは長い黒髪の女性が答える。
「私は、『
まさかの日本神話の最高神だった。
それに続くように、次は「ワイルドなお兄さん」が答える。
「俺は『ゼウス』、オリュンポスの長だ。よろしくな」
今度はギリシャ神話の最高神だった。
そして、最後に「クールなお兄さん」が答える。
「僕は『オーディン』。ヴァルハラの主だ」
最後は北欧神話の最高神だった。
「な、そん、な、『神』だって? 何てこった、何てこった……」
いきなり現れた「神」を名乗る男女に狼狽する春風。そんな彼の口から出た次の言葉は、
「その髪型、スゲェ似合ってます!」
「「「え、本当? 嬉しいな……って、違うだろっ!」」」
その瞬間、何も無い空間に、「神」を名乗る男女の突っ込みが響き渡った。
さて長くなったが、これが、後に「神殺しの大賢者」と呼ばれる事になる少年、幸村春風と、彼の故郷「地球」を守る神々との出会いだった。
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