第三話

 二人は次の村にたどり着けなかった。


 ロインは風の刃の術で樹を切り倒し…と言いたいところだが周りには樹が無かった。草原である。


 (野宿か……)


 雨や雪が降ったら最悪である。南西に向かっているのにまだまだ冬の景色だ。


 「ここから先、しばらくは草原だ」


 カズヤが言う。


 「テント、やっぱ必要だな」


 その言葉にカズヤが驚く。


 「お前、テントなしで今まで旅してきたのか?」


 「いざとなったら小屋作ればいいんだからな」


  カズヤは首を振った。


 「世の中、森林がある場所だけじゃない。今はまだ草原だがロッキーのあたりに行くと砂漠だぞ」


 「砂漠?」


 ロインは砂漠という言葉も意味も知らない。


  「一面、砂と石の世界だ」


  「そっか……」


  「今度からテントを買っておけ」


  「ああ」


  「で、ここからずっと南西に行くのか?」


  「まあな」


  「目的地は?」


  「ない」


  「宛てがないのか」


  「三年旅をしろという命令だからな」


  ――ロイン、ロイン!


  水晶が光った。この声、もしかして!!


  水晶を手に取った。


  ――ロインか! お前の旅の名声があちこちで聞こえるぞ。


  「ありがとう」


  ――小屋を作ったんだってな。おかげで旅の者に大好評だ。


  ――おかげでロインの株が上がってるぞ。


  ――ところで今どこにいるんだ?

 

 「分からない。森林を出て草原に差し掛かっている」


  ――大河ミシシッピにぶつかるだろうな。


  「大河?」


  ――船じゃないと渡れないぞ。


  「そっか~」


  元気そうで何より。また水晶が反応したら返事してくれよな。


  水晶の光が消えた。


  「お前便利なもの持ってるな」


  カズヤも不思議そうに見ていた。


  「まあね」


  (初めて使ったけどね)


  「さあ、寝るか」

 

  二人は火を消して横になった。


  一面の星空の下で寝る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る