第六話

 村から離れた森にザイロとロインはやって来た。鳥がぐえっ!ぐえっ!と啼く。魔鳥だろうか。 


 「分かってるな」


 ザイロが再確認する。


 「はい」


 「変化は苦しいぞ」


 「はい!」


 「私は万が一の時のために蟲神むしがみの仮面を持つ。万が一お前が変化後に暴走した場合は巨大な吸血蟲きゅうけつちゅうとなってお前を亡ぼす」


 「はい」


 ザイロから渡されたのは熊の仮面。


 「呪文を唱えよ」


 その言葉の後にロインは呪文を唱えた。すると仮面にあった宝石が光り出し仮面と自分の顔が一体化する。めきめき音を立てながらどんどん自分が巨大化する。


 ――痛い!!


 口が裂け鉤爪が伸びる。


 その後なぜか気持ちい感覚が支配する。なるほどこれは癖になりそうだ。


 こうしてロインは巨大な熊となった。


 「その樹を爪でなぎ倒せ」


 ザイロの命令通り爪をふるうといとも簡単に簡単に巨木が倒れた。


 「解除せよ」


 解除呪文を唱えると元の姿に戻った。


 「あと覚える仮面の呪文は三つだ」


 「分かってる」


 こうして他の三つの仮面もかぶってロインは変化を遂げた。幸いロインは理性を失って暴走することはなった。


 「合格だ。最後は上級魔法だな。一気に敵を殲滅せんめつする魔法になる」


 「はい!」


 魔鳥達の声が森に響く。警戒しているようだ。まあ、そりゃこんな姿を見せたらね。だが僕たちを襲ってこない。襲ったら自分たちが死ぬと分かっているからなんだろう。

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