ベルダーシュの勇者
らんた
第一部 ベルダーシュの勇者
第一章 俺、第三の性になって魔術師にもなるの!?
~序~
ここは北米の広大な山脈のふもとの村。後の世はこの山脈をアパラチア山脈と呼ぶ。対岸の西欧ではヴァイキング達が暴れアイスランドどころかグリーンランドまでやって来たという時代。
春は
「おい、何やってるんだよ」
「間抜け!!」
サムル族のロインはすべてにおいて何やっても駄目であった。サムル族というのは農耕を主な生業とするイロコイ系部族。もちろん呪具も作り他の部族との交易も行っていた。「ポトラッチ」と言って酋長が贈り物競争するほどの豊かさだ。家はウイグラムと言って
もっともこの村は「奴隷身分」を認めないという酋長の村だったが。
ロインは女子にすら力で負け、狩猟は出来ず、簡単な織物は織れず何もないところで躓く始末。落ち着きがなく物はすぐ無くし農耕も狩猟も出来ぬ。
ロインは幼少期に病魔で両親を亡くしている。その後里親は僕をいじめた。そのせいでますます引っ込み思案となり挙動もおかしくなった。いつも頭や肩をぴくっと動かすのであった。ロインは毎日神に祈る日々だった。
ロインは村人にいつも笑われ、呆られていた。黒髪・黒瞳で小柄で茶色の粗末な衣装を着……初歩的な魔よけの効力があるネックレスを身に着けるロインはいつも失笑してその場を誤魔化すだけだ。その粗末な服に泥が投げつけられる。
そんなロインは十二歳のある日、信じられない夢を見た。
――お前はサムル族の魔術師になる素質がある。ベルダーシュになり、性を変えるのだ
お告げを下したのは黄金の
ロインはこの夢を見てから人生がすべて変わってしまった。ついに願いをかなえてくれる時が来たのだ。
これは北米のサムル族、ベルダーシュの勇者の物語。
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