魔法適性ゼロと無能認定済みのわたしですが、『可視の魔眼』で最強の魔法少女を目指します!~友達ゼロのぼっちなのでソロで魔王討伐を決意したら、妹と御三家令嬢たちがわたしを放そうとしない件について~
47 気持ちが上手く伝わらないことってありますよね!
47 気持ちが上手く伝わらないことってありますよね!
「セシルさんっ、話を聞いてくださいよー」
隣で岩石になってしまったセシルさんがわたしの話を聞いてくれません。
硬い岩のように心を閉ざしてしまったのです。
「聞かない」
「ど、どうして……そんな……」
そこまでセシルさんを動揺させてしまうほど、悪いことをしてしまったのでしょか。
「おい、アレ見ろよ」
「うわ、ラピスが岩に話しかけてんじゃん。とうとう頭がおかしくなったんだな」
前に座る男の子、ヨハン君とマルコ君の会話が聞こえてきます。
「頭おかしいのはお前だよ……。アレはセシル様の防御魔法だよ……」
「あ、ほんとだ。二人で何してんの?」
「またラピスがセシル様を困らせたんだろう」
「タチわりぃー」
そんなことない、と言い返したい気持ちもありますが、わたしがセシルさんの気持ちを害させたのは事実。
だから言い返すことは出来ません。
ただ、前にいる男の子達が気付くということは他の人にも伝わるという事で……。
「せ、セシルさん。その状態目立ちすぎです、皆見てますよっ」
教室で岩になっている女の子なんて目立って仕方ないのです。
クラスメイトの視線が集まって落ち着きません。
「岩に感情はない。だから見られても気にならない」
岩になりきっている!?
いえ、喋っちゃってる時点でそうでもないような……。
「おやおや、さっきから二人で何してるの?新しい遊び?」
ミミアちゃんがひょっこりと現れます。
そうです、この好機を生かしましょう。ミミアちゃんのとのことを説明し、セシルさんの誤解を解くのです。
「ミミアちゃん、これは遊びじゃありません。セシルさんが急に岩になって話を聞いてくれなくなってしまったんです」
「やっぱり遊びに聞こえるけど……本気なんだね?」
ミミアちゃんは困ったように笑いながらも、わたしが大真面目だということを察してくれています。
「……ミミア?」
ぴくっと動いた気がしました。
「セシルちゃん、とにかくそんなのやめたらどう?きっと皆困ってるよ?」
「……わかった」
な、なんと!?
ミミアちゃんの一言で聞き入れてくれました……!
わたしの時は全然聞いてくれませんでしたけどね!
わたしの発言力が低いのか、ミミアちゃんの威厳が凄いのか。どう考えても後者だと思いますが!
ガラガラと音を立てて岩が崩れると、その場から透けて消えていきます。
魔力が失われることで物質として存在できなくなってしまったのです。
椅子に座るセシルさんが姿を現します。
ですが、その眼はどこかまだ冷たさを帯びている様にも見えるのですが……。
「これでいい?」
「うん、いいと思うよ。ね、エメちゃん?」
「あ、はいっ。これでちゃんとお話ができ……」
――ガタン。てくてくてくてく……
セシルさんはおもむろに椅子から立ち上がると、こちらに急接近してきます。
――ぐいっ
わたしと隣にいたミミアちゃんの間に両手を入れて、掻き分けるように両腕を開くのでした。
必然的にわたしとミミアちゃんとの距離が空きます。
「おっとと……問答無用だねセシルちゃん」
一瞬バランスを崩しそうになったミミアちゃんですが、すぐにいつもの笑顔に戻ります。
「用は済んだでしょ。もう戻って」
ですが、セシルさんはいつも以上にクールな表情と声色をミミアちゃんに向けるのです。
「ええ……?セシルちゃんご機嫌ななめ?なんかミミアお邪魔しちゃった?」
それでも動じないミミアちゃん。
全く意に介さずマイペースに話を進めます。
「私はエメと話してた、貴女じゃない」
「岩になってた人が話してたの?何言ってるのか自分で分かってる?」
「ミミアには関係ない」
「なら、ちゃんと関係ない場所でやらないとね?教室で岩になっといて放っとけなんて、構ってちゃんだと思われても仕方ないよ?」
……え、あの。
気のせいですか?二人ともちょっとピリピリしてませんか?
「お、おい……セシル様とミミア様が何か言い合ってるぞ」
「いつも柔和なミミア様と、常に我関せずなセシル様が言い争うなんて……何が起きたんだ!?」
それは本当にわたしもそう思います。どうしてこんな展開になってしまったのでしょう。
「とにかくミミアに用はない、エメから離れて」
「ええ~?やだよ、ミミアはエメちゃんに用があるもんっ」
ミミアちゃんはぴょこんと跳ねて、わたしの腕に絡みついてきます。
「み、ミミアちゃん!?」
「えへへ、エメちゃん捕まえたー」
可愛いミミアちゃんですが……それを見るセシルさんの目が……!!
「ミミア……」
こわい、こわい、怖いです。
セシルさんが氷のように冷たい眼に……!?
「ねえエメちゃん。ミミアね、さっきの生徒会室の話で気になることがあったんだけど……って、これは他の人に聞かれちゃまずいんだった!場所変える?」
ああ……ミミアちゃん。
どうしてここでそんな爆破必須な話題を提供してしまうのですか……。
「何、エメとの秘密って……」
「うふふ。それが言えないから秘密なんだよ?セシルちゃんの方こそ離れてくれると助かるかも?なんてね」
「あわわわ……!ミミアちゃん、場所を変えるならわたし達にすべきですよ。クラスメイトの皆さんがこんなにいるんですからっ!」
もう導火線に火が着いているとしか思えません。
ここは一旦退散してですね……!
「あ、そっか。エメちゃんは人目のつかない所がお好み?」
――サアァァーー……。
わたしの血の気が引いて行きます。
どうしてミミアちゃんはそんなにこの場をこじらせるような発言ばかりを……。
いえ、冷静に考えればミミアちゃんはほとんどいつも通りなんですけど。今回はセシルさんが普通じゃないから問題なのであって……。
――ガシッ
ミミアちゃんが絡みついていたのはわたしの左腕、その反対の右腕をセシルさんが掴んでいたのです。
「エメ……そんなにその女がいいの?」
「へ……?」
良いとか悪いとか、そんなのないというか。そもそもこれは何の話ですか……?
そしてセシルさんはどうしてそんな寂しそうな瞳をしているんですか?
わたしの中の罪悪感が爆発しちゃいそうなんですけど、どうしたらいいですか?
「俺達は今何を見せられているんだ……?」
「ステラの二人がラピスを取り合う三角関係……?」
「いや有り得ねえだろ。崩壊してるよそのシナリオ」
「……だよな。じゃあアレは何と表現したら?」
わたしも是非その答えを聞かせて欲しいのです。
「あははっ、ミミアとエメちゃんの仲は特別なんだよっ♪」
――ブチッ
あ、何かが弾ける音が聞こえました。
「特別ってなに。ちょっとだけエメとの間に秘密があるだけでしょ?」
「んん?それが特別って言うんじゃないの?それともセシルちゃんの方こそエメちゃんとの二人だけの秘密はあるのかな……?」
あ、あの、お二人さん……?
わたしを挟んでこの会話はしないと成立しないものなのでしょうか……?
「……ある」
「え、あるの?」
ここに来て初めて、ミミアちゃんは会話の主導権をセシルさんに渡したのです。
「私はエメと一緒にお風呂に入ったの」
「……ウソでしょ?」
するする、っと絡みついていたミミアちゃんの腕がほどけます。
全身から力が抜け、呆けるような表情に。
――ギッギッギッ
そんな音が聞こえてきそうなほど、油が切れかかったような動きで首を回したミミアちゃんはわたしを見つめてきます。
「ほんとなの?エメちゃん」
「え、あの、はい」
お泊まりですからね。
「え、やっぱあの二人出来てんじゃね……?」
「ってことは本当にラピスの取り合い!?」
変な声が外野から聞こえて来るような……。
「それだけじゃない、その後は……」
「その後ってまさか……!?」
ミミアちゃんが息を潜めます。
「一緒に寝たの」
「ウソウソ!!それってそういうこと!?」
「? ……そういうこと(よく分からないけど)」
「み、ミミアもそこまでの世界はさすがに未体験ゾーンなのに……」
ミミアちゃんの口から魂が出て行きそうなんですが……。
「お、おい、聞いたか……!?」
「そ、それってつまり……!!」
あれ、何やらクラス中が妙な熱気を持っています……。
もうよく分かりません。
「――ああ、もう!バカしかいないのここ!?もう黙ってらんない!!」
困惑しているわたし、勝ち誇ったセシルさん、魂が抜けそうなミミアちゃん、何かを疑い出しているクラスメイト達。
そんな様子を見ていられないと言わんばかりに、現れたのはシャルロッテなのでした。
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