48 熱くなると周りが見えなくなりますよね!
【シャルロッテ視点】
つ、つい口を挟んでしまった……!
ていうか、どうしてあの二人がお姉ちゃんを取り合ってるわけ……!?
セシルはともかく、ミミアまでいつの間にそんなに親密になったのよ!?
「え、シャル……!?」
お姉ちゃんは学校でわたしが話しかけてきたことに驚いているのだろう。
「まさかのあの修羅場にシャルロッテさんも参戦……!?」
「どれだけ泥沼化していくんだ……!」
「ていうかシャルロッテさんってラピスの妹だよな?」
「えっ……ということは禁断の愛?」
本当にアホな会話をしているのが耳に届く。
「そんなことあるわけないでしょ!?冷静に考えなさいよっ!!」
わたしはアホな会話をしている男子に声を張り上げる。
「ひぃっ!」「す、すみません……!」
アホ男子め。謝るのはいいが、この他にも誤解をしているクラスメイトが何人もいるに違いない……!
その誤解を解かないと!
「セシルも発言が紛らわしいのよ!あんたは家に来て泊まっただけでしょ!?」
周りにも聞こえるようにわたしは声を張り上げる。
「あ、なるほどお泊まりか」
「そうだよな。冷静に考えればそんないけない関係のわけが……」
よし、これでひとまずは落ち着いて……。
「いやいや、お泊りするにしたって一緒にお風呂は入らないよね!?その後も一緒に寝たとか言うし……絶対そういう関係でしょ!?」
「そういう関係(よく分からないけど)」
ミミアが更にツッコんできた!
そしてセシルもなぜそれを肯定するの!?
「違うでしょ!こいつが倒れたセシルを気遣って家に泊めてあげただけよ!」
「えー?ミミアそれだけじゃ納得できない。お風呂一緒に入るなんて絶対普通じゃないよね?」
「セシルは倒れたばかりで体が満足に動かせないだろうからって、こいつの優しさでセシルを洗ってあげることにしたのよ!」
「あ、そういうことなんだ……」
よし、ミミアもちょっとは納得し始めたわね。
「……エメ、そうだったの?」
だが、それを聞いてなぜか嬉しそうに瞳を輝かせるセシル。
こいつ、やっぱりお姉ちゃんのことを……!
「え?いえ、わたしはただ仲良しイベントをしてみたくて……ぶぺっ!?」
「あんたは喋るな!!」
反射的にわたしの手でお姉ちゃんの口を塞いでしまう。
「~~むう!むうう!」
空気が漏れる音だけで何を言っているのか分からないが、今は仕方ない。
というか、お姉ちゃんもわたしの気遣いに気付いて欲しいんだけど!?
「……なんだ、つまりラピスがセシル様のご機嫌とりをしようと接待したって話か」
「まあ、オチなんてそんなもんだよな」
よ、よし……。周りのクラスメイトも理解したようだ。
お姉ちゃんの株が落ちている気もするけど、誤解が解けたのならそれでいい。
正直な話、わたしにとってお姉ちゃんは冴えないラピスとして誰からも相手にされなくていいのだ。
そんな可哀そうなお姉ちゃんを相手してあげるわたしがいればいいのだから。
「じゃ、じゃあ一緒に寝たっていうのは、本当にそれだけなんだね……?」
「他に何があるのよ、変な妄想し過ぎなのよミミア」
「そ、そうだよねえ。さすがにないよねぇ、あはは」
ホッと胸を撫でおろしているミミア。
こいつもこいつで、どうしてお姉ちゃんに何事もないと分かって安心しているのだ……?
まさか、こいつも……!?
「分かったわね。セシルにミミア、そいつから手を離しなさい」
「……」
「……」
なぜ二人とも返事をしない!?
「いや、エメちゃんとセシルちゃんとの間に何もないことは分かったけど?それとこれとは別だよね、ミミアはエメちゃんに用あるもん」
「私もある」
「ウソはやめてよセシルちゃん。さっきまで話そうとしてなかったよね?」
「嘘じゃない」
「じゃあ何の用があるの、ミミアに教えて?」
「……お泊まり思い出トーク?」
「“?”ついちゃってる!しかも絶対今考えたよね!」
こ、こいつら……どうしてわたしを無視して、お姉ちゃんを奪い合っているのだ!?
二人ともお姉ちゃんの腕から離れなさいよ……!!
「ああ!はいはい!おしまいおしまい!二人とも離れなさい!」
「あわっ、あわわわ……わぷっ!!」
両腕をセシルとミミアに取られているので、わたしはお姉ちゃんの顔を胸に押し付ける。
この二人に渡すわけにはいかないのだ。
「ちょっとシャルちゃん!?それはズル……じゃなくて何してるの!?」
「シャルロッテ……エメに無理強いは良くない」
両腕を千切れんばかりに取り合っている二人が言うセリフかっ!?
「わたしもこいつに用があんのよ!」
「ええ?シャルちゃんこそ、大した用事じゃないでしょ?」
「シャルロッテは一緒に住んでいるんだから、後にすべき」
こ、こいつらめ……!
こうなったら力づくでも……!
「――お三方はエメさんをどうなさりたいのかしら?」
「「「え?」」」
その冷静な声に、三人の返事が重なった。
燃えるように赤い髪、リアが呆れかえったような表情で忠告してきたのだ。
「教室に戻ってきたら異様な光景が目に入ってきたので思わず声を掛けてしまいましたわ」
異様な光景……?
「控えめに言って、エメさんがイジメられているようにしか見えなくてよ」
お姉ちゃんの姿を見る。
顔を胸に当てたせいで体は前のめり。
そのおかげで腕は左右後方に引っ張られる形に。
首と肩を同時に引っこ抜こうとしている画のようにしか見えない。
「……ふーっ、ふぅぅーーっ!!」
しかも呼吸も苦しそうだった。
「お可哀想だから放してあげるべきかと」
落ち着きを取り戻したわたしたちは、同じタイミングでお姉ちゃんを解放するのだった。
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