Transition 境界線の在り処

 身体が跳ねた感覚で我に返った。


 俺は今、『魔法石調査団』で太陽光を電力に変換する光電石でんちの改良を請け負っている。何がなんだかわからんが凄そうなものは、とりあえずだ。

 その仕組みを読み解けばになる。

 で、石を磨いたり、薬液に浸けたり、刻む呪文を添削したり、思い切ってルーン文字で記述してみたりしたがさっぱりだ。


 だから気分転換に過去を再生した。

 それは時々、未来を視ることと同義だ。過去と未来はいつも繋がっている。


 記憶にある風景には奇妙なリアリティがあって、夢だとわかっていながら真面目に感じ考え行動するせいで、相応の疲労感に見舞われる。

 おそらく当時を反芻し、見えていなかった可能性を再考しているのだろう。

 そこにトリノ星人などと未知なるものが紛れ込んでいたら、それは未来の一部だ。


 あの時俺は、生理食塩水に適応したトリノ星人をことを夢想した。


 彼らの高度な探査・索敵能力と情報分析能。爆発的に増えたのは、外敵の侵入や横行を許さなかったからでもある。

 そして圧倒的な数の知見を束ねた集合知。その彼らが今度は自らを分割して各地に散っている。

 それをいち早く取り込むことができれば……。


 はるか昔、ミトコンドリアエネルギー工場を取り込んだ俺たちは、今も二つの遺伝子を継承し続けている。ならばトリノ星人と共生することも可能だろう。


 それもまた超統合知性体ニュートリノを巡る未来の一つとなろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る