第16話

 俺は、耳を塞いで、布団の中で縮こまって震えていた。


ベッドの一方が沈んだ。誰かがベッドに上がってきたんだ、そう思うと戦慄し涙が流れる。


突然、一気にかけ布団がはじけ飛ぶ。


「うわっ」悲鳴をあげてベッドから転がり落ちて、ベッドを見る。


ひまりが裸のまま立っていた。


表情が消えて、能面のような顔、下目で俺をみている。


「あ~な~た~」さっきと同じ低い怨みのこもったような妻の声だ。


俺はひまりに妻が乗り移ったんだと思った。


手当たり次第にものを妻が乗り移ったひまりにぶつけた。

そして体当たりして寝室を抜けだそうとドアを開けた。


「ぎゃ~っ」絶叫した。


そこには血まみれの妻が立っていた。


振り向くと妻の顔をしたひまりが能面のよう


な表情で俺を睨んでいた。


「うわ~っ!助けてくれーっ!」大声で叫ん


で、目を瞑って廊下へ飛び出した。


そして階下へ逃げた。


しかし、もうそこには血まみれの妻が玄関に通じるドアの前に立って、俺を睨みつけていた。


そして、階段を一歩一歩ゆっくり妻の顔をしたひまりが裸のまま ギィ、ギィ、ギィ、と床板を鳴らしながら降りて来る。


「来るなっ!、もう許してくれっ!」血まみれの妻に向かって怒鳴った。


「ひまりが、ひまりがお前を殺せって言ったんだ!」咄嗟に叫んだ。なんとしても逃げたかった。


まったく反応なく「お~ま~え~」と低い怨みのこもった声で血まみれの妻が唸ると、


「死ね~、死ね~」と妻が乗り移ったひまり

が妻の声で低音で唸る。

 

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