第9話
よく見ると自分の顔が映っていた。
ため息をついてカーテンを閉めて振り返ると、少し開いていたドアの後ろを何かがサッと通り過ぎた。
えっと思って廊下に顔を出す。何もあるはずはなかった。
もう一部屋、子供部屋がある。
ドアを開けて真っ暗の中に顔が浮かんで見えた。
自分の顔だと思って窓に近づくと、妻の血まみれの顔がそこに浮かんでいて 「ぎゃっ」叫んで尻もちをついた。
慌てて這って電気のスイッチを押した。窓には自分の顔がぼんやりと映っていて、ほっとした。
そして寝室のドアを開けて電気を点けた。
そうすると、寝室の妻のドレッサーの引き出しが開いて、小瓶がいくつか転がっていた。この転がる音だ。
何でだ?と思ったが、拾って引き出しに入れ、ふと鏡を見ると、後ろに血まみれの妻が立っている。
ドキッとして振り返ると誰もいない。
もう一度鏡を見ると血まみれの妻が悲しそうに怨めしそうに立っていた。
「うわっ」と叫んで振り向く。
そこには誰も見えなかった。
きっと、自分の行為が幻を見せているんだと自分に言い聞かせた。
そうしてリビングに戻った。
野球中継が試合途中で終わって、今はニュース番組になっていた。
面白そうな番組はなかったので、シャワーを浴びることにした。
その時、インターホンが鳴った。ひまりでも来たかと思ってインターホンには出ずに、直接、玄関の鍵を外してドアを開けた。
誰もいない。辺りの暗闇を見回したがやはり誰もいない。
誤作動か?変なこともあるもんだと思って中に入って鍵を掛けリビングに戻った。
すると、またインターホンが鳴った。今度は受話器を取って「はい」と返事をした。
カメラには俯いた女性が写っていた。
妻の服だと気が付いた。一瞬驚いたが昨日ひまりが着ていた服だ。やっぱりひまりが来たんだと思って、玄関を開けた。
すると、誰もいなかった。
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