第7話

だから、ひまりに妻の写真を見せてそういう化粧をさせようと思った。そして一緒に暮らすのだ。

ひまりのアパートはそのまま借りて、会社へ行くときは本来の自分の化粧をするようにしたら、妻は生きていることになる。


近所の人も誤魔化せると思った。

ひまりに話してみる。しばらく考えていたが同意した。


それで、今日はここへ泊ることにした。

9時は過ぎていたがいつものすし屋から出前をとった。

妻の化粧をしたひまりをどう見るのか実験でもあった。

30分後、インターホンが出前の到着を教えてくれた。ひまりがでた。


「奥さん、いつもありがとうございます」と

いういつもの配達の兄ちゃんの声がした。

微塵も疑ってはいない声音だった。

鮨を食べビールで祝杯を挙げた。


明日、この家に居るとき用の下着や衣類を買って、二重生活をすることにしようと話した。

スカートやブラウス、ワンピースなど上に着るものは妻のものを使って、徐々に変えていこうと話した。

ひまりは渋々うんと頷いた。

寝室は2階にある。トイレとシャワーは二階にもある。

夜中の0時過ぎまでダブルのベッドで飲んでいちゃついていた。

そしていつの間にか寝てしまったようだった。


ふと目覚めると時計は3時を示している。

トイレに行きたくなってベッドを抜けようとひまりの顔を見てドキッとした。

妻が寝ているかと勘違いした。

妻と同じ化粧をさせていたことを忘れていた。


用を済ませて洗面所で手を洗ってふと鏡を見ると、薄暗い鏡の奥に妻の顔が浮かんでいた。


「ギャッ」と叫んで振り返ると、ひまりが立っていた。トイレだと言う。

化粧を落とせと言っておいた。

夜はやはり怖かった。

ベッドで横になってひまりの戻りを待っていたが、なかなか来なかった。


何かあったかと思ってベッドから出ようとして、何気なく後ろを見るとひまりは既に寝ていた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る