14.第19班の実力②
10秒が経過し、俺の魔法の効果が解ける。
ガガンッ!
双子が押さえる客車が急に進路を塞き止められて、後方を跳ね上げて止まる。
中にいる人間は、慣性で前に投げ出されている事だろう。
後方を走っていた黒装束集団も、この異常な事態に走力を落して狼狽えを見せている。
そんな中でもエヴァは脇目も振らず黒装束に向かっていく。相手はまだ気付いていない。
そこに――黒装束の集団に、衝撃波のようなモノが次々と到達し、そいつ等を薙ぎ倒す。
ベルジャナの手から放たれた【
「そんりゃぁ! ほれゃぁあ! いっげぇ~(行っけぇ~)!」
子供が駄々をこねて親の足を叩く時みたいに出鱈目なフォームで、左右両手の平に創った魔力の球を投げていく。
それが物凄い威力で、次々と黒装束を弾き飛ばしていく。
◆◆◆
――二年前、ベルジャナは王国に併合された超辺境の地域から、大量の魔力を保有していると鳴り物入りで王都へ来た。
各騎士団の争奪戦が起こると噂されていたが、いざ王都に現れて属性診断が行わると属性不明。
極端な人見知りで碌な受け答えも出来ない様子から、周囲は一気に落胆に変わり、意思疎通困難の烙印を押されてうちの隊へ。そして第19班へ。
俺もどうしたらいいか分からなかったが、俺と双子で根気強く接して、いろいろ励まして、慣れてもらった。
属性なんか分からなくても、俺みたいにふとした時に使い道が解かる時が来ると思うから、それまではその魔力自体を活かせないか色々苦労して、【ただの魔力放出した膜】【ただの魔力球】というとんでもないモノを編み出した。
それらが使える目処が立った時には、俺の耳元に囁けるほどに人見知りは改善されたけど、訛りが酷くて何を言っているのか理解できなかったっけ……。
◆◆◆
ベルジャナの魔力球で、散々体勢を崩された黒装束にエヴァが突っ込んでいく。
「はぁーっ! 覚悟ぉー!」
◆◆◆
――エヴァはうちに来てまだ一年。
家の名誉を傷付けないために、籍を抜けて平民としてやってきた。
双子のようなパワーも、ベルジャナのような魔力量も無いが、彼女には抜群のセンスがある。剣の基礎技術も備えている。
スピードもやる気も元気も、民を守るという純粋な気持ちも、知性も併せ持つ素晴らしい少女だ。
今のところ、彼女の才能を伸ばす最善の方法は見い出せていないが、俺はこの少女がどう成長していくか楽しみでしょうがない。
◆◆◆
隙だらけの敵の腕や足を流れるように斬り付けていき、俺が双子のところに辿り着いた頃には、半数以上を無力化していた。
“外”の黒装束は、ベルジャナとエヴァに任せれても大丈夫そうだな。
「「マーちゃん遅~い!」」
「悪い悪い。悪い所もう一つ頼まれてくれるか?」
「「なあに?」」
「“あれ”をやって壊してくれないか。客車を」
「「い、いいの?」」
「ああ、頼む」
俺の頼みで、サンドとポルトが二人並んで腕を組み、魔力を練り上げ集中を深める。
そして――
「「いくわよっ! せぇ~のっ! 【
この結界の中、双子ひとりひとりの魔法は小さく取るに足らない物でも、二人合わさると強大で誰も見たことのない魔法となる。
客車の上に大量に細かい水滴が現われ、それをつむじ風が取り込み巻き上げていく。
巻き上げられた水滴は、上昇するにつれてキラキラと周囲の僅かな光を反射して煌めく。
そしてやがてつむじ風の中で、ぱちぱちと弾けるような音と閃光が起こる。
徐々に激しくなり、遂には大きな雷となって客車を直撃、粉々に破砕した!
中で転がる人間が露わになる。
「良くやった、サンディー! ポーラ! 後は俺がやる」
「「あ~ん! やっと呼んでくれたぁ!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます