第4話


 神亀は表情こそ表にあまり出さない。だがかなり真面目な性格だと根岸は思っている。


 しかし、だからこそため込みやすく、また名家という立場や状況。環境も相まって元々表に出しづらかったのではないだろうか。


 いや、表情が表に出にくいのもひょっとしたら「弱音を吐く事すら許されない」という根岸とはまた違った意味で環境故にそうなってしまったのかも知れない。


「……」


 そう考えると……神亀も相当苦労して来たのだろう。


「そう……かも知れないね」

「あんた……いや、冥さん。本当は人間が嫌いなんだろ」

「!」


 根岸の指摘に神亀は一瞬ピクッと反応したモノの、否定はしない。


「……やっぱりな。何となくそう思ってはいたけどよ」

「……」

「いや、コレは言い方が悪かったか」

「?」


「人間……というより、人間の本質。そういった根っこの部分が見えるのが嫌なんだろ?」

「……」


 そこまで言うと、神亀は無言のまま何も言わない。だから多分、当たっているのだろうとは思う。


「――人って本当に強欲で傲慢で……だからこそ、たまに思う。こんな人たちのために私は何をしているんだろう……って」

「……」

「神様は元々。人が祀って信仰した尊い存在。そんな彼らが墜ちて……人を憎むなんて……よっぽどの事。本当であれば反省すべきなのは人間のはずなのに……」


 それなのに神亀は人間の立場に立って『神殺し』をしなければならない。


「自分の役割はちゃんと分かっているつもりではある。だけど……」

「神殺しが完了して消えていく神を見るのは……辛いか」


 そう言うと、神亀は無言で頷く。


 ただ、この話をした根岸自身も最初に『神殺し』をした時はとにかく「虚しい」という気持ちでいっぱいだった。


「正直、俺も自分。何をしてんだろって思った。自分で勝手に信仰して時間が経てば忘れ去る。もしくは何か悪い事が起きればその原因にすらする。本当に何様だとすら思う。だけど……」


 そこで根岸は言葉を句切る。


「誰も犠牲になって良いとは思わない」


 根岸はこれまでの『神殺し』の現場を思い出しながら、キッパリと言い切った。

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