第8話 男の子を助けた件

 倒れている男の子に駆け寄る僕とエル。僕よりも年下のその子は多分、仮登録ギリギリの8歳だと思う。男の子は外傷は見当たらないけど、気絶しているみたいだ。周りにはスライムコアが5個落ちていたんだ。

 エルが男の子の様子を見て言った。


「どうやら魔力切れを起こしたようですね。暫くは目を覚まさないかも知れません。どうされますか?」


 僕は少しだけ考えてから、男の子を背負ってギルドに戻る事にしたんだ。僕は12歳だけど、背も高い方だしこの子ぐらいなら楽に背負える。それぐらい鍛えられたからね。うっ…… 一瞬だけあの辛い日々が脳裏を過ぎったよ……

 スライムコアはエルに持ってもらった。西門が見えてきたら門の辺りがザワザワしていた。そして、男の子を抱えた僕を見つけた門番さんが駆け寄ってきた。


「おお! コードだ。有難う、探していたんだっ!」


 門番さんがそう言って僕が背負っていた男の子を抱えてくれた。そして、


「本当に助かったよ。この子はうちの子と幼馴染でな。まだ8歳なんだが、冒険者に憧れを持っていて仮登録をしたばかりなんだ。薬草採取に連れて行ってもらうと言って、冒険者たちと門を出ていったんだが、その冒険者たちだけが戻ってきてな…… どうやら新人を喰い物にする悪いヤツらだったようだ…… 俺がもっとシッカリと確認しておけば良かったんだが」


 そう言って事情を教えてくれたんだ。やっぱり8歳だったようだ。僕の見る目も中々だねと自画自賛を脳内でしていたら、ギルドの受付にいたエミリーさんが僕たちの方に駆け足でやって来た。


「ユージ様、エル様、弟を助けて頂き本当に有難うございます!!」


 エミリーさんが僕とエルに頭を下げてきた。弟さんだったんだね。


「コードくんは魔力切れを起こしているだけのようです。どうやら一緒に薬草採取に行った冒険者たちに置き去りにされたようですね。それと、コレはコードくんが倒したスライムのコアです。お渡ししておきます」


「まあ! 5つも!? コードは魔力が低くて初級の【火炎】も3回ぐらいしか撃てないのに…… お2人とも本当に有難うございます。お2人に見つけていただけなければ、コードは気絶したままスライムに溶かされて亡くなっていたでしょう…… 後ほど、父と母を連れてご挨拶に参りますので、よろしくお願いします」


 エミリーさんがそう言うけど、もうコードくんの身内であるエミリーさんからお礼の言葉も貰ったし僕としてはご両親からのお礼は要らないと思って、こう言ったよ。


「いえ、たまたまコードくんが倒れている場所を僕たちが通っただけなんですから。気絶してる方を放っておくなんて普通の人はしませんし、そんなに気にしないで下さい。当たり前の事をしただけなんです。ですから、ご両親を連れて来られる必要はありませんからね。エミリーさんの言葉だけで十分ですよ。それにしても、コードくんは冒険者に向いてますね。たまたま僕たちが通りかかる強運の持ち主なんですから」


 僕の最後の言葉にハッとした顔をするエミリーさん。恐らくだけど、コードくんに冒険者なんて辞めるように言い聞かせるつもりだったんだろうね。頭ごなしにそう言うと反発されるかも知れないから、僕は頭ごなしに辞めろって言わないでくださいねって意味を込めたつもりだけど、どうやら通じたようだよ。良かった…… 余計なお世話だって怒られずに済んで。


 それから僕とエルはエミリーさんと別れて冒険者ギルドに向かった。そして、採取した初級薬草30束と初級毒消草8束を買取カウンターに持っていったんだ。


「おう! 初日から30束もか! やるな! 違う葉も混ざってないし、取り方も丁寧で状態もいいな! これは期待の新人が入ってくれたな! 俺は買取専門で、解体師でもあるギルド職員のゴーダックだ。よろしくな、ユージにエル。 薬草が1束500コルクだから、15,000コルクに毒消草が1束1,000コルクだから、8,000コルクだな。合わせて23,000コルクで、銀貨2枚と小銀貨3枚だ。それと2人とも昇級だな。初日にGランクからFランクに上がったのはうちのギルドでは2人が初めてだぞ。おめでとう!」


 買取カウンターに居たゴーダックさんがそう言って褒めてくれたよ。それからゴーダックさんに言われるままにアンクレットをめた腕を差し出すと、アンクレットの貴石にゴーダックさんが手に持った道具を当てた。すると灰色だった貴石が薄い黄色になったんだ。


「よし、コレで2人ともFランクになったぞ。明日からだが受けられる依頼がFランクとEランクのものになる。Gランクの常設依頼は受けられなくなるから注意してくれよ。あの常設依頼は新人や仮登録をした幼い子ども用のだからな」


 そう教えてくれたゴーダックさんにお礼を言って、僕とエルはギルドを出た。そして、ハクシン商会に行ってお弁当を買ったんだ。今日は僕がピッグカツ丼で、エルはピッグカツサンドを買ったよ。僕も明日はピッグカツサンドを買おうと思う。


「お帰りなさい、ユージさん、エルさん。2人とも今日はコードを助けてくれて有難うございました」


 宿屋に戻ると受付のお姉さんがそう言ってきたんだ。僕とエルが不思議に思いお姉さんを見ると、苦笑しながらお姉さんが教えてくれたよ。


「あ、ゴメンナサイ。事情が分からないですよね。実はコードは私の母の妹の子なので、私とは従弟いとこ関係になるんです。叔母がお2人にくれぐれもよろしくと言っておりました」


「ああ、そうだったんですね。本当にたまたま通りかかる事が出来て良かったです。魔力切れらしいからコードくんも明日には元気になってると思いますよ」


 僕が笑顔でそう言うとお姉さんが名前を教えてくれたよ。


「名乗ってなかったですよね? 私はラムレといいます。コードも気がついたようでお2人にお礼を言いたいって言ってましたが、明日もしも冒険者ギルドで会ったらよろしくお願いしますね」


 僕とエルはそれに頷いて返事をして部屋に戻ったんだ。そして、部屋では昨日と同じ攻防がエルと僕の間で繰り広げられ、また僕が勝ったんだよ。

  

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