第7話 冒険者登録の件

 ギルドに入ると中は静かで、殆どの冒険者が依頼を受けて出払った状態になってるようだ。冒険者に登録出来る年齢は10歳からなんだけど、見習い期間という事で、8歳から仮登録出来るらしいんだ。まあ、僕は12歳だから問題なく登録出来るんだけどね。仮登録の場合は登録料もツケが効いて、達成した依頼の報酬から少しずつ返していくらしい。

 って、ギルドに入って直ぐに大きな紙が貼られてたから読んだだけなんだけどね。


 僕とエルは受付に行ってお姉さんに用件を告げたんだ。


「スミマセン、登録したいのですがコチラで大丈夫ですか?」


 お姉さんは僕の言葉に目を丸くしながら返事をした。


「あら、凄く丁寧に聞かれたわ。はい、ゴメンナサイ。私はエミリーと言います、よろしくお願いしますね。登録はコチラで大丈夫ですよ。お2人ですか? 登録にはお1人につき、10,000コルク(銀貨1枚)必要になりますが大丈夫でしょうか?」


 と、僕とエルを見て聞いてきたので頷く。


「それでしたら、コチラに必要事項をご記入下さい。それが終わりましたら、コチラの水晶に利き手を置いて下さいね」


 僕とエルはエミリーさんに銀貨2枚を手渡し、出された書類に記入していく。名前、年齢、職業、レベル、スキル(任意)を記入するようになっている。僕とエルはスキルだけ空欄にしてエミリーさんに提出した。


「アラ、スキルはご記入頂けませんか…… スキルによっては最低ランクから始めなくてもよくなりますけど?」


 と言われたけど2人で首を横に振ってそのつもりが無い事を伝えた。


「そうですか…… 残念です。では、気を取り直して、コチラに利き手を置いていただけますか? 登録アンクレットを作成しますので」


 そう言われたので僕から手を置いた。すると、エミリーさんの前にあるカウンターの下から音がした。エミリーさんは下に手を伸ばして腕輪を取り出したんだ。


「はい、コチラがユージ様の登録証になります。最新式ですので、まだこの登録証を着けてる方は少ないですけど。前からの冒険者の方にも切り替えるようにとオススメはしてるんですけど、中々みなさん切り替えに来てくれなくて…… あ、スミマセン、つい愚痴を言ってしまいました。

コチラは右手首か左手首に装着して下さいね。他国でも身分証明書として使用できますから。このアンクレットに入ってる貴石が今は灰色になってます。コレはランクを表すのですが、ユージ様のランクはGランクの最低ランクとなります。受けられる依頼に制限がございますので、ご注意下さい。Gランク依頼を10件達成すればFランクに上がりますので、頑張って下さい。貴石はランクが上がると自動で色が変わりますので。詳細はコチラのパンフレットでご確認して頂けますか? よろしくお願いします」


 エミリーさんはエルにも同じ説明をして、こうして僕たち2人は冒険者になったんだ。

 最新式の登録証を見てつい嬉しくてニマニマしてしまうよ。それにしても、町でナンパしてきた冒険者の人たちがアンクレットを着けてなかったのは切り替えしてないからだという事が分かったのも良かった。


 それから、依頼掲示板にエルと向かうとGランク用と書かれた掲示板に貼られていたのは、


【スライムコアの収穫】

個数制限無し

1つにつき300コルク(銅貨3枚)


【初級薬草採取】

1束(葉10枚)につき500コルク(銅貨5枚)

(1束で依頼1件達成)


【初級毒消草採取】

1束(葉10枚)につき1,000コルク(小銀貨1枚)

(1束で依頼1件達成)


 この3つだけだったよ。パンフレットを確認してみたら常設依頼というもので、依頼期限なんかは無くて、いつ持って来ても買取してくれるらしい。コレは低ランク救済処置だってパンフレットに堂々と書いてあったよ。パンフレットには初級薬草と初級毒消草の精密な絵と詳細な特徴も書かれてあった。

 それと、安全に採取出来る場所も。スライムは居るようだけどね。スライムは初級の火魔法【火炎かえん】が使用出来たなら直ぐに倒せるから、10歳以下の子供たちも【火炎かえん】が使える子を仲間にして、パーティーを組んでこの採取依頼をやってるらしい。

 コレは依頼を見てた僕とエルに受付してくれたエミリーさんが暇だったのか、カウンターから出てきて色々と語ってくれたから知った事だけどね。

 その中には、冒険者登録をしてない子でも買取は行っており、金額もそのままで買取してるそうだよ。そして、町中にあったハクシン商会でも同じ金額で買取してるんだって。冒険者ギルドで冒険者に絡まれたりせずに済むから、一般人はハクシン商会に持っていく事が多いそうだよ。将来、冒険者を目指してる子なんかはギルドに持ち込むらしいけどね。


 僕とエルは相談して3件ともやってみる事にしたんだ。パンフレットに書いてある場所を目指して町の西門に向かうと、門番さんに


「おっ! 新しい登録証だな! スライムが殆どだけど、たまに角ウサギも出るから気をつけてな!」


 って言ってもらったので、新人らしく


「はい、有難うございます! 注意して採取します!」


 と大きな声で返事をしたんだ。門番さんは僕の返事に嬉しそうな顔をしてくれたよ。


 そして西門を出て歩く事15分。川べりに着いた僕とエルは初級薬草を見つけたから、パンフレットで確認しながら採取を始めたんだ。


 それから少しずつ川の上流に向かって進むと、初級毒消草も見つかった。スライムとはまだ遭遇してない。

 初級薬草が2人で30束、初級毒消草が8束出来たから僕とエルはギルドに戻る事にしたんだ。気がつけばかなり上流まで進んでしまってたからね。残念ながら、気配察知で探ったけどスライムは居ないみたいだよ。下流に向かって歩き出した僕とエルは、何でスライムが居ないんだろうねって話合いながら進んだ。


 そして、1人の男の子が倒れてるのを見つけたんだ。



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