23:パッとしない
目玉が飛び出る。
レベルこれどうなってんだ? わからん、いきなりのインフレに思考が追いつかない。
え? あのAPWK《アルティメットパーフェクトワイトキング》だって500レベルくらいだっただろ。
本当に、女神を殴っただけでレベルが上がったのか?
ステータスの数値に変化はないけど、残高と書かれた項目だけが異様な変動を見せている。察するに、レベルが上がるととりあえずは残高だけにポイントが加算されて、後から自分で好きなステータスに割り振る感じなんだろうか。
「正解です。でもこれは勇者であるアギト様の特権ですね。この世界の人々はレベルアップする過程で培ったステータスへと自動でポイントが振り分けられるんですよ」
心を読むなと言うに。
まあしかし、それなら早速ステ弄りでもしようかな。
ステータス用紙を操作してポイントが割り振れるようなので、とりあえず実験的に……5000ポイントくらいやってみるか。
で、こうなりました。
――
本名:
種族︰人間
称号:
レベル:638
HP:3980/3980 ←new!
MP:300/300 ←new!
こうげき︰1000 ←new!
ぼうぎょ:1200 ←new!
とくこう:100 ←new!
とくぼう:1500 ←new!
すばやさ:1000 ←new!
残高:4000 ←down
【ユニークスキル】
・
・
・???
・???
・???
・???
・???
・???
【スキル】
・ステータス
【備考】
ステータスを任意で上げられるようなゲームであれば極振りの一芸特化型に育てるタイプの人間なのだが、自らの命がかかった状況では全てのステータスが大事に思えて、結局は無難な振り分けに落ち着いた。
守りのステータスの高さに悪あがきの形跡が見られる。
――
結局5000ポイント以上使っちゃったけど、とりあえず今必要そうなステータスは1000以上に上げてみた。【残高】だってまだ4000ポイントあるし、後は臨機応変に、必要になったら随時上げて対策していけばいいんじゃないだろうか。
それにここは剣と魔法の異世界。
いつ強力な魔法を使えるようになるかもわからないんだから【とくこう】に割ける分のポイントは残しておかないとな。
うん、我ながら手堅くて良いステ振りだ。
「どうよ。これだけステータスがあればこの階層はなんとかなりそうじゃないか?」
女神に意見を求める。
返事がないので振り向くと、岩肌にころんと転がって寝息を立てていた。
容赦ないデコピンが女神を襲う!
「起きろバカ!」
「あイタっ! ……ああ、終わりました?」
おでこを撫でて目を細めて、自らの左手首に目を落とす。
腕時計付けてたんですね。
「うわ、四時間も掛けたんですか!? うわ! それでいて何というか、パっとしないステータスですね……うわぁ」
「は? 普通にムカつくんだが」
「いやムカつかれましても……いやでも、この無難な感じがまた……本当にダサいです。ちょっとガッカリんぎぃ!」
ロシアンフックの要領で脳天を叩き割る。
こちとら命かかっとんじゃい。お前を喜ばせるためにステ振りしてねンだわ。
「うーん、私からすれば……いえ、口で言ってもあれなので、とりあえず実証してみましょうか」
「はい?」
実証?
こいつの発言で行動に移すのって凄い嫌なんだけど。
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