-6 筋肉痛
「……ん、痛って」
目が覚めると身体のあちこちが悲鳴を上げていた。節々がすげー痛い。床で寝っ転がってたせいだろう。
「そういえば、須藤は……」
キョロキョロ辺りを見回してみるが、姿はなかった。俺が起きるより先に、帰ったんだろうな。
どうにか身を起こし、ひとつ息をつく。身体とは裏腹に、頭は冴えてるような感じがする。出すもんを出して賢者になってるからだろう。
「また、流されちゃったな」
鳥栖だけでなく、須藤とも一線を越えてしまった。
けれど、あんな美女二人に迫られたら、抵抗なんてできるはずないよな……? ハニートラップに引っかかったとしても、おかしくないよな……?
俺は自分にそう言い聞かせることでしか、正気を保てる気がしなかったから。
「でも、昨日の須藤、ヘンなこと言ってたんだよなぁ」
――旭くんになら、もっと見られたっていいです
――ふざけてませんよ。私は、いつだって本気ですから
「……まさか、な」
脳裏にチラッと浮かんだその考えをかぶりを振って払いのけ、パチンと頬を叩く。分不相応だって、自分でも分かってるからな。
とりあえず、大学に行く準備でもしよう。
「おっはよ~、旭っち!」
「――いでぇぇっ!?」
大学の門をくぐって早々に、俺の身体に衝撃が走った。振り返るまでもない、あの女だ。
「鳥栖お前っ、殺す気か――!」
「え? あ、なんかごめん。そんなに力入れてないんだけど」
「筋肉痛なんだよこっちは」
「へー、運動でもしたん?」
「…………」
まぁ、ある意味運動だったけど。かなり激しめのやつだったけど。
ふいと目を逸らせば、腕を鳥栖が掴んでくる。それから、耳元でささやかれた。
「……なら今日さ、旭っちの家に行ってい~い?」
「え、来るのか?」
「だって、その身体じゃしんどそうだし。ウチがいろいろ手伝ってあ・げ・る」
「マジか! それは助かる」
頻繁に来てくれるとはいえ、バイトがあるときは遠慮させてもらっていた。ま、とはいっても勝手に上がりこんで家事やってくれたりするときもあるけど。
家に帰ったときに、美味そうなご飯と手書きのメモがあるときの幸せときたら。思い出してちょっとニヤけそうだ。
「今日って、バイトある日だっけ?」
「ある。けど、こんな身体じゃ迷惑かけるだろうから、休み入れとく」
「にひひっ、そうしろそうしろ。なにごとも身体が資本じゃぞ~」
バシバシ背中を……いや、撫でさすりながら、鳥栖がはにかんだ。コイツのこういう思いやりにあふれたとこ、ほんと好きだわ。
人前でおっぱいをむにむに押しつけてくるのは、マジでやめてほしいけども。
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