第18話 バッタの怪物

 ウィザードのデッキを組み上げ、カードの使い方などの説明を俺が葵に一枚ずつ説明していると


『キィィィィィン』


 と、いつもの耳鳴りが聞こえてきた。


「ちょっと鏡の先でトラブルみたいだ」

「そういうの分かるんだね」

「ああ。黒板を爪で擦ったようなひどい耳鳴りがするんだ」

「それはなんか嫌だなぁ」

「あはは!まぁそんなんだから、ちょちょっと行ってくるよ」


 眉を顰める葵の眉間をちょこんとつついて立ち上がる俺を葵のオパールのような瞳が見上げる。


「危ないんでしょ……」

「でも行かないと」

「無事に帰ってきてね」

「もちろん」


 すっと瞳を閉じ、顔を上げる葵の赤い唇に俺の唇を重ねる。

 チュッと軽く啄むようなキスをして俺は鏡の中へ飛び込んだ!


 しばらくして現れたのはバッタ?の怪物だ。

 仮面のヒーローのようなスタイリッシュなバッタじゃない。

 緑色のボディをむりやり直立させ、顔を無理やり前に向けたような気持ち悪い感じだ。


「ジジジジジ」

「そんな虫をむりやり二足歩行させられてもなぁ」

「ジジジジジジ!」

「うるせえ!全ての仮面のヒーローに謝れ!」


 飛び込んで来るバッタの怪物だが


【アクティベイト】


【チェンジ・オーガ】


 変身で発生するエネルギーの波動がバッタ怪物を吹き飛ばす!

 俺は地面に叩きつけられ、のたうつバッタ怪物に躍りかかる!


「おらあ!」


 ドゴン!と質量のある蹴りをお見舞いしてやると、バッタ怪物はジジジと背中を震わせながら空中で体勢を入れ替え、お返しだと言わんばかりの蹴りが来る。


「バッタ野郎!そのキックは全仮面のヒーローを敵に回したぞ!」


 オーガのパワーでバッタキックを振り上げた拳で容易く迎撃すると


【コンボー】


 ズガン!と地面に突き刺さったコンボーを手に、ドゴン!ドゴン!とバッタ怪物のボディを滅多打ちにする!


「ジジジ……」


 地面にひれ伏したバッタ怪物。


「バッタ怪物!コレが本物のヒーローの必殺技だ!


【ファイナルアタック】


「おおおおお───」


 下半身に漲るパワーを爆発させ、空高くへ飛び上がる!


「らああああ───!」


 右足を突き出し急降下!

 俺の蹴り足は紅蓮の炎を纏いバッタ物を蹴り飛ばした!


 ボボボン!


 紅蓮の炎を纏いし蹴りは着弾と同時にそのエネルギーを対象に流し込む。


 蹴り飛ばされた対象は空中で爆発四散するのだ。


「うお!?」


 バッタ怪物を蹴り飛ばして着地したところ、背中をビシャン!と何かが叩きつけられる。

 痛みにヒリつく背中を庇うように振り向くと、そこには茨のようなトゲを持つムチを手にした者がいた。


「……アガザイのお友達か?」

「くくく」


 俺の質問への返答は手にしたムチ!

 振るわれたムチの先端が俺に向かってくるのを俺は地面を転がるようにして回避し、その遠心力を利用して立ち上がる。


「問答無用ってことか!」


【ストライカー】


 拳にエネルギーを溜め、目の前のムチ野郎に解き放つ!


「おおお!らああああ!」


 ごう!と唸る火炎弾がムチ野郎を焼き尽くさんとするが、ムチ野郎もカードを一枚取り出してデッキに読み込ませる。


【ソニック】


 青白く発光したムチをビシャンと振るえば俺が放った火炎弾が真っ二つに切り裂かれた。

 左右に分かれて爆発した火炎弾の中からヤツが飛び込んでくる!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る