第74話 (閑話)タケシのお見合い・弐
ぶっ込んだまま返事を待つ木山さん。タケシは暫く固まっていたが、
「木山さん、俺も一目惚れです!! 結婚を前提にギャランドゥしましょうっ!!」
おい! ギャランドゥって…… 何を言ってるんだコイツは…… これではさすがの木山さんも呆れて…… と思った私はまだ木山さんの性格を掴みきれてなかったようだ。
「嬉しいっ!! 本当ですかっ!?」
2人が盛り上がり始めたのを見た私は呆れながらもマインを使用して香山くんと真理ちゃんを呼び出す。香山くんと真理ちゃんは部屋の近くで待機していたらしく、直ぐにノックの音が聞こえた。盛り上がっているタケシと木山さんは気づいてない。
私は扉を開けて2人を部屋に入れた。真理ちゃんが香山くんを連れてタケシの元に行く。
「お父さん、素敵な方に出会えたのね。私も素敵な男性に出会えたの。紹介するわ、コチラが結婚を前提にお付合いしている
真理ちゃんが少し嬉しそうにそう言うと、香山くんも自己紹介を始めた。
「はじめまして、真理さんとお付合いさせていただいている香山です。今後ともよろしくお願いします」
タケシは挨拶されて何でこの2人がここに居るんだという顔をしていたが、気づいたのだろう。私を見て言った。
「これはタケフミ、お前の手配だな」
「そうだ、タケシ。お前が2人、特に香山くんと会うのを避けていると聞いてな。木山さんには悪いけどこのタイミングを利用させて貰ったんだ」
「木山さん、悪いね。コッチは俺のひとり娘の真理で、横の男は娘を狙う悪漢だ! 今から俺の逮捕劇をお見せするよ」
そう言って立ち上がろうとするタケシに私は待ったをかけた。
「まあ、待て。タケシよ、東郷さんも私も香山くんを認めているが、それでも信用出来ないか? 私は真理ちゃんに悪意ある相手ならば認めたりしない事はタケシにも分かると思うが」
私がそう言うとタケシは
「そんな事は関係ないんだよ、タケフミ。娘を狙うヤツは良い奴だろうが関係ないんだ!」
と私に向かって言う。そこで木山さんが発言した。
「アラ? その情熱は娘さんにだけなの? さっき、私に言ってくれた言葉は嘘なのね…… 悲しいわ、真理ちゃんせっかく出会えたけど、あなたのお父さんはあなただけを大切にしたいそうなの、だから今日だけしかお会いできないみたいだわ」
木山さんが悲しそうにそう真理ちゃんに話しかける。
「んな? そ、そんな事はないよ、木山さん! もちろん
木山さんの言葉に動揺するタケシ。フフフ、やはり木山さんがいる所で2人と会わせたのは正解だったようだな。その言葉を聞いた木山さんが更に追い打ちをかける。
「それなら名前で呼んで下さらない、タケシさん? 私だけが名前呼びをしてるのなんて他人行儀だわ」
「はい、分かりました、ミドリさん! これからはそう呼ばせて貰います! そして、いいか! 香山とやら、真理と付き合うのは許そう! クソッ! タケフミめ、覚えてろよ!! だがもしも真理を泣かすような事があって見ろ! 地獄の底までも追い詰めて逮捕するからな!!」
タケシが木山さんに追い込まれて真理ちゃんと香山くんが付き合うのを認めた。間で私への悪態も入っていたが聞き流そうと思う。
よし、これで2人の悩みも解決したな。
真理ちゃんと香山くんが私に感謝の眼差しを向けてくるが、私は笑顔で頷いておく。そして、真理ちゃんが木山さんに言う。
「木山さん、ご挨拶が遅れてしまって申し訳ありません。相馬武史の娘で真理といいます。至らないところも多い父ですが、母が亡くなってから男手一つで私を育ててくれた立派な父です。どうか、よろしくお願いします」
真理ちゃんの挨拶を聞いて木山さんが返事をした。
「まあ、まあまあ!! 何て立派なお嬢さんなの!
その言葉を聞いて中山さんが冷静に突っ込む。
「飲む必要があるのは美登利姉さんの方だと思うの……」
私も少しその意見に賛同だ。タケシは娘である真理ちゃんを褒められて嬉しそうにしている。
「いや、ミドリさん、そんなに褒めると娘が天狗になってしまうから」
「お父さんと一緒にしないでよ! そんな事で天狗になったりしないわよ!」
親子喧嘩が始まりそうだったので、私は香山くんに目配せする。ちゃんと察してくれた香山くんはさすがだ。
「真理さん、そろそろお
香山くんの言葉に真理ちゃんも頷いて、
「ごめんなさい、大切な時間をお邪魔してしまって。もしも、父が何かしでかしたなら私に言って下さいね、懲らしめますから」
と言うだけ言って部屋の外に出た。私と中山さんも見送る為に出る。
「タケフミさん、有難う。父が認めてくれたのはこのタイミングだったからだと思う。本当に来て良かった」
「真理ちゃん、香山くん、良かったじゃないか。これで親公認の仲だ。私も役目が果たせてホッとしたよ」
「あの〜、私は中山咲月と言って木山のマネジャーをしております〜。良かったら真理さん、マインの連絡先を教えて頂けますか〜? それと、真理さんの連絡先を私から木山に伝えてもいいですか〜?」
中山さんがそう言う。あ、そう言えば私も紹介するのを忘れていたな。
「はい! 勿論です。ごめんなさい、ご挨拶もせずに……」
真理ちゃんがそう言って中山さんに謝る。
「いいんでよ〜。お陰様で木山にもやっと春が訪れそうなので。真理さんのお父様のお陰で〜」
ニコニコ笑顔でそう返事した中山さんとマインの交換をして真理ちゃんと香山くんは去って行った。地元に帰るのは自分たちで帰りますというので私も頷いて了承しておいた。せっかくタケシに認められたんだから、2人っきりになりたいだろうしね。
そして、部屋に入ると部屋の中の2人は既にかなりな速度で親密になっていた。
「ねぇ、タケシ〜。私、貴方と結婚したら芸能界を引退するわ〜」
「何を言ってるんだ、ミドリ。画面から君が居なくなったら日本が暗くなってしまう! 君は君の道を行けば良いんだよ!」
「でもでも〜、私はタケシとの間に子供が欲しい……ゴニョゴニョ……」
「それは勿論だ! 毎晩君を離さないからなっ!!」
…… …… ……
「えーっと、中山さん?」
「はい、鴉さん、何でしょう……?」
「木山さんは今日って完全なオフなんですか?」
「はい、そうなんです…… 実は明後日まで……」
「何か私はお邪魔なようなのでここらで退散させて頂いてもいいでしょうかね?」
「あ、鴉さんズルいです〜。私も退散したいんですから〜」
そんな会話を2人を見ながら中山さんとしていたら、タケシが私と中山さんに気づいた。
「アレ? タケフミ、まだ居たのか? 真理と一緒に帰ったのかと思ったんだが」
いや、タケシよ…… 私がセッティングしたんだからそんな無責任な事をする訳ないだろう?
「まあ、いいか。タケフミ、ありがとうな。ミドリとは近いうちに結婚するから、式には出てくれよ!!」
そう言って私にサムズアップをかますタケシに私は
「そうか、お互いに好印象なようで良かったよ。もちろん、式には呼んでくれよ。それじゃ、私はもう行くから、後は仲良くな」
邪魔者なようだから中山さんに目でまだいて欲しいとの合図を貰ったが、退散する事にした。
うーん、ちょっとしたイタズラ心で2人を会わせてみたけど、ここまで上手く行くとは……
私は恋占いでもすればそれなりに稼げるかも知れないなと思いつつ、残った中山さんが上手く抜けれますようにと祈りながらホテルを後にした。
もちろん、ホテルの支配人にはまだお見合いが続いているから、終わったらよろしくと伝えてある。
こうして、後の世に【清楚系魔女を堕とした男】と日本国民から呼ばれるタケシが誕生した瞬間だった……
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