第67話 小豆島で撮影、愛媛県へ
翌朝、私たちはテレビ局のスタッフと一緒に小豆島に渡った。
撮影はここ、
ヤツに指示されて先回りしていたに違いない。私は警戒を強めている。
撮影は準備が整い次第はじめる予定で、スタッフさんたちが急ピッチで準備している。今回の撮影はドラマではなくバラエティ番組だ。月に1回放送されている特番で、【地元飯、食べてみた】という番組だ。
木山さんは食べて素直な感想を言うので楽しみにしている人も多いようだ。今回は養殖魚に焦点を当てているそうで、小豆島のオリーブハマチを小豆島ではどう料理するのかなども紹介されるそうだ。
私も楽しみなのだが、駒の1人の動向をつかむとどうやら食事する場所に待機しているようだ。この男の能力は【闇魔法】。精神系の魔法攻撃が得意なようだが、それだけでなく元自衛官で近接戦闘にも自信を持っているのが【思考感知、解析】により分かった。
しかしヤツはこんな駒で本当にどうにか出来ると思っているのだろうか? いくら来ても相手にならないと分かる筈なのだが……
その頃、タケフミにヤツと呼ばれる謎の存在は頭を抱えていた。
「ぐぬぬぬっ、抜かったわ…… まさかこれ程の力の持ち主が現れるとは思ってなかったからのう…… こんな事ならばもちっと鍛えた駒を用意しておくべきであった…… クッこのままでは我はあの世界に戻れぬ…… むうっ…… 危険ではあるがやはり我自身でアヤツに対処せねばならぬか…… ならば今しばらくの時を力を溜めるのに使い、十分に溜まった
このように結論づけて、謎の存在は力を溜める為に日本各地にある己の分体に分散して行くのであった……
オリーブハマチは非常に美味しそうだ。あとで私も食べようと心に誓う。
「はあ〜、プリップリねぇ。美味しいわぁ〜。コッチのカルパッチョもオリーブオイルとブラックペッパーが効いてて最高だわ」
どうやら木山さんの口にも合ったようだ。美味しいものは美味しいと素直に言い、美味しくないと思ったら何故そう思ったのかをハッキリという人なので、よく分かる。
そう思いながら見ていたらどうやら駒が動き出したようだ。徐々にコチラに近づいて来ている。どうやら狙いは木山さんではなく私のようだ。おそらくはヤツに指示されて私を先ずはどうにかしろと言われたのだろう。だが、未熟過ぎるな……
地球、それも日本では通用するであろう隠形術なのだろうが、異世界で鍛えられた私、どころかD級冒険者にも通用しないレベルだぞ。
私は近づいてくる駒に向かって殺気を飛ばしてやる。ビクッとなってその場で動けなくなる駒。私は素早く駒の能力を封じた。そして私は駒に近づいていく。駒は何故わかったというような顔をしているが、構うことはしない。
それでもさすがに近接戦闘に自信があるからか駒は落ち着いた態度で私が近づくのを待っている。
「すみません、今は撮影中で関係者以外は立ち入り禁止なのですが」
私は先ずはそう言って反応を見てみる。
「ああ、そうなんですか? いや申し訳ない。知らなかったものですから」
駒がそう返答してきたので私は更に言った。
「手前にスタッフが居て撮影中の看板を掲げていたはずですが?」
私がそう言い終えたのとほぼ同時に能力を使用して私を攻撃しようとする駒。しかし、何も発動しない。
「なっ!? クソッ!!」
発動しない能力にアッサリと見切りをつけて駒は私に殴りかかってきた。その判断の早さは褒めてもいいな。私はそう思いながら駒の拳を受け流し、駒の両腕、両足にかかる重力を【重力魔法】で2倍にしてやる。
「ガッ! な、何だ! 腕が! 足がっ!?」
そう言いながら倒れ込む駒を私は不審者として縛り上げた。
「残念だがお前の能力は封じ込めたし、もう二度と悪さを出来ないように両手足に重しをつけさせて貰った。頑張って普通に動けるようになるといいな……」
そこまで伝えて駒の記憶から私に関する事を消去した。そして、警察を呼ぶ。
撮影中に立ち入り禁止場所に入ってきて挙動不審だったので取り押さえたと説明して、駒のポケットからナイフが出てきたのを確認した警察官は駒をそのまま連行して行った。
私はその場での事情聴取に応じるだけで良かった。
これで残るは2人。どこで仕掛けてくるのか? まあ、どこで仕掛けてこようが関係ないが。
こうして小豆島での撮影は無事に終わり、次の撮影地である愛媛県に向かう事になった私たちはまたフェリーに乗り、高松に戻り車での移動を開始したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます