第64話 逮捕、そして四国へ
マサシに教えたのは魔力を
「いいか、マサシ。手に魔力を集めて魔法を使用するように、自分の目に魔力を集めてみるんだ。先ずは利き目で構わない」
「わかったよ、フミくん。やってみる」
そう言ってマサシは目に魔力を集めようと努力している。ほう、マサシの利き目は左だったのか。手は右利きなのに意外だな。
やがてマサシの目に魔力が集まった。そこで私はマサシに声をかけた。
「よし! そのまま私を
【生活魔法】の
「ああ! フミくんの手から出たものが部屋全体に広がって消えたよ! コレが魔力を
マサシが驚きながらも嬉しそうな声を出した。
「そうだ。コレで相手が魔法や技能を使用しているのが分かるようになる。自在に意識せずに出来るようになるまでは訓練あるのみだから、頑張ってくれ」
私はマサシにそう言った。既に40歳になってる私たちは必要だと思った事は面倒でも実践するクセがついている。私が見ていなくてもマサシは自分で訓練するだろう。
「分かった! フミくん、有難う。ここの本は自由に見て触れてもいいからね! でも、持出しは厳禁だから」
よし、コレで暇が出来たらココにきて
そして私とマサシはアパートを出て手黒の元に向かう。手黒の魔力を既に把握している私は、ヤツが新宿に居る事を確認していた。
電車に乗って移動した私とマサシは手黒が飲み屋に居るのを確認した。そこからヤツを尾行することにした。マサシにも私の【不可視】と【隠密】をかける。
「こ、これで本当に見えなくなってるのかい? 僕にはフミくんがハッキリと見えてるけど……」
心配そうに言うマサシに私は言った。
「マサシ、大丈夫だ。私がかけたからマサシには私が見えているだけだ。例えばあそこで誰かを待っているだろう人の目の前に行って顔の真ん前で手を振ってみろ」
半信半疑で私の言うとおりに実行してみるマサシ。顔の前で手を振られて、風を感じただろう人は一瞬だけキョロキョロしたが、誰も居ないかのようにまた手に持ったスマホに注意を向けた。
マサシが嬉々として私の所に戻ってきた。
「凄いよ、フミくん! ホントに僕が居るとは思われなかったようだよ!」
因みにだが、私とマサシだけは会話出来るように除外してあるが遮音はしている。
「そうだ、だから安心してくれ。但し、私が動くなと言ったらその場を動かないでくれ」
そう、アイツが出てきたら私の【不可視】も【隠密】も効かない。なのでその時はマサシを結界で囲んで守らなければならない。
「分かった。その時はフミくんの指示に従うよ」
そして、私たちは手黒が店から出てくるのを待った。ヤツがやったと思われる強姦事件(未遂含む)は、周期的に行われていて、ちょうど今日がその周期に当てはまる。
深夜1時、終電も無くなった時間にヤツは動き始めた。周りを見回しこの深夜にも関わらずに飲み歩いている若い女性たちのグループの後をつけだした。
その後ろを私とマサシがついていく。女性たちのグループが1人、また1人と少なくなっていく。どうやら歩いてそれぞれの自宅に戻っているようだ。
そして、遂に最後の1人となった時に、ヤツは更に近づいていった。
「フミくん、僕達ももっと近づいた方がいい」
マサシはそう言うが、私は首を横に振った。
「心配するな、マサシ。襲いかかった事実を見たら私がヤツを動けなくするから」
そう、女性には悪いが襲われたと実感してもらい、証言してもらわなければならない。なので、私はそれまでは辛抱しろとマサシに言った。
そして遂にその時がやって来た。手黒は女性が薄暗い公園に入っていくのを確認すると、猛然と走り出したのだ。私たちも走り出してその後ろにピッタリと張り付いていく。
そして、手黒に気がついた女性が後ろを振り返るが、既に目前に居た手黒が女性に抱きついた瞬間に私は【闇魔法】で手黒の体を拘束して動けなくして、更に私とマサシの【不可視】と【隠密】を解除した。
「それまでだ、手黒。強姦未遂の現行犯として逮捕する!」
マサシが懐から手錠を取り出して動けなくなった手黒にかけた。私は女性にもう大丈夫ですよと声をかけて、手を貸して立たせた。そして、気がついた。
あ、この人男性だ……。
「もお〜、お気に入りの服が汚れちゃったわ! 何てことするのよ! コイツめっ!!」
少し野太い声でそう言ったあとにマサシに手錠をかけられた手黒を蹴った被害者さん。マサシも男性だと知った衝撃で少し呆然としていたが、気を取り直して被害者さんに声をかけた。
「あ、あのすみません。被害届を出していただきたいのですが、新宿署まで同行してもらえますか?」
マサシがそう聞くと、被害者さんは
「新宿署ね…… まあ良いわ。はい、同行します」
そう言って同意してくれた。私はそこで別れる。後は警察であるマサシの仕事だからだ。赤坂署署長のマサシが新宿署でどう説明するのかは私には分からないが、そこはうまい事やるだろう。
別れ際にマサシが
「フミくん、助かったよ、有難う」
と言ったので、私も軽く話をした。
「手黒の技能は封じ込めたから、後は何とか今までにコイツがやった犯罪行為を立証してくれ」
私がそう言うとマサシは分かったと言って被害者さんと手黒を公園の外に導いた。新宿署に連絡を入れてパトカーに来てもらう手筈だそうだ。
そして、私は誰も居なくなった公園から自宅に転移した。これで残りは3人か……
そして、私はレッツラゴー事務所に来ている。時刻は早朝3時半だ。4時にと言われていたが遅刻してもいけないので30分早めに来た。
のだが、既に木山さんを含めて同行するスタッフもそろっていた。私が一番遅かった……
「あら、早いのね、鴉さん。さすが出来る男は違うわ〜」
なんて木山さんには言われたが、
「いえ、どうやらお待たせしたようですね、すみません」
と私が素直に言うと、木山さんはケタケタ笑って
「約束は4時なんだし、30分も早く来てるんだから謝る必要なんて無いわよ〜」
そう言ってくれた。そして、私が来た事で全員がそろったので少し早いが出発する事になった。
マイクロバスを社用車として持ってるとは、さすが大きな芸能事務所だと思ったが、実はそちらはテレビ局の持ち物らしく、私と木山さんはそちらではなく、木山さんのマネジャーさんと3人でミニバンに乗っていく事になっていた。どうやらテレビ局のスタッフも本日、一緒に移動するのでそのマイクロバスについていくらしい。
ミニバンの運転はマネジャーさんがするようだ。マネジャーさんは20代前半に見える女性だった。私は助手席に座ろうと思ったが、木山さんに一緒に後部座席に座ってちゃんとガードしてくれないと、と言われ後部座席に座る。
「疲れたら言って下さい。運転を変わります」
とマネジャーさんに声をかけると、
「大丈夫ですよ〜。休憩しながら行きますから〜。今日は移動だけですし、でも有難うございます〜」
と間延びした喋り方で返事がきた。
「あ、この娘は私の姉の子で、姪っ子なの。頼りになるのよ」
と木山さんがマネジャーさんの事を教えてくれた。
「
私もよろしくお願いしますと返事をして、車は四国へと向かう為に出発したのだった。
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