第53話 スコットランド2日目の夜
翌日からも何事も無く撮影は順調に進んだ。
表面上は…… その裏では【G】という昆虫のようにわく米国産の能力者たちをことごとく返り討ちにしている私がいた。
英国の後は米国かよって思ったが、わいて出てくるモノはしょうがない。私は【G】 を叩く要領で能力者たちを次々に消していった。
誤解の無いように言っておくが、命を消した訳ではなく、私の目の前から居なくなって貰っただけだ。
「ヘイ・ユー!」(米国産能力者)
「いや、用事無いから」(私)
【魔力封じ込め、強制転移】
「ヘイ・ユー!」(米国産能力者)
「関係者以外の立入りを禁じてます」(私)
【魔力封じ込め、勃起中枢神経閉鎖、強制転移】
「ヘイ・ユー!」(米国産能力者)
「ああ言えばこう言う!」(私、日本語)
【魔力封じ込め、勃起中枢神経閉鎖、足の甲にかかる重力1.5倍、強制転移】
などなど、撮影2日目の今日は8名がやって来たが全てお国に帰っていただいた。入出国手続き? 自分たちの所属する組織が何とかするだろうと思う。
5人目辺りから、いい加減私も飽きてきたので対応は粗雑になってしまったが、撮影が順調に進むのが一番なので問題ないだろうと思う。
そしてホテルに戻ると何故か私の部屋をノックして入ってくる桧山さん。
私にはその
「バカヤロウ、俺だってその
既に名前でしかも呼び捨て! まあ、昨夜の件でそこまで心を許してくれたのだと納得しつつ嬉しく思った。今日は試飲もホドホドだったしね。
しかし、食事に行くなら私も一緒にとカオリちゃんが言ってくれたようだ。日本に戻ると色々と確認しなければならないが、今は仕事を優先させるべきだろう。ならば私の返事は一つだ。
「もちろん、喜んでご一緒させていただきますよ。それと、一回につき深野さんの家での画像1枚で通訳も手をうちますよ?」
私はにこやかにそう言ってみたが、桧山さんは強気だった。
「バカ言うな! 涼子も香織も居るんだからタケフミの通訳なんているかよ!」
うん? 昨日と言ってる事がちがうって? ファン心理を理解してないようだね。
説明しよう! ファンは素の女優さんの私生活は見たくない。だが、日常にふと現れる素の表情の写真は見てみたいものなんだよ。それが真のファンというものだ。分かったかな? 諸君。
しかし、フッフッフッ…… 桧山さん、その強気の発言は本当に大丈夫ですかね?
私は気が変わったら言ってくださいねと伝え、部屋を出てフロントで待つカオリちゃんと
「突然、ごめんなさいね、鴉さん。どうしても食べに行きたいステーキハウスを見つけたの」
どうやら
「いえ、とんでもない。ステーキハウスですか。楽しみです」
私は本当に楽しみにしていた。その楽しみを壊そうとするバカが居ないといいなと思いながら、ホテルを4人で出た。
どうやらホテルから徒歩7分ほどの近くらしく、それで行く気になったらしい。
私たちは自然と前を
私とカオリちゃんは無言。前を歩く2人は夫婦の会話を楽しんでいる。その会話を聞くともなしに聞きながら歩いていると、カオリちゃんがふいに私に話しかけてきた。
「タケフミさん、パパがごめんなさい」
そう言って私に謝るカオリちゃん。
やっぱり君なんだね……
だが、私はイギリスには仕事で来ている。なので、この場ではカオリちゃんに対しての言葉を返す。
「いやいや、何の事だい? カオリちゃんのお父さんとはすっかり仲良くなったよ」
私の言葉にちょっと不満げな顔をしたが、カオリちゃんもちゃんと私の意図に乗ってくれた。
「昨日、撮影の時にがぶがぶ試飲してたし、その後にタケフミさんが職人さんに何て言われてたか聞こえたから……」
「ああ、それなら気にしなくても大丈夫だよ。今日はちゃんとしてくれてたしね。実は昨夜、私の部屋にカオリちゃんのお父さんがやってきてね。2人で腹を割って話し合ったんだ。だから、今後は大丈夫だと思う」
私もカオリちゃんも2人とも内心では話し合いたいと思っている事を口に出してない。互いにもどかしさを感じている。けれども今はまだそれで良いとも私は思っている。
もちろん日本に戻ると直ぐに話し合いをしたいが、お互いの都合が合わないと無理だろう。でも、私は日本に戻ったら直ぐにタカフミさんに直談判してカオリちゃんとしっかり話す時間を作ろうと考えていた。
そんな感じで歩いていたら、直ぐに目的のステーキハウスにたどり着いた。
その夜は
「おい、俺は今夜は抱くぞ!」
とわざわざ宣言しやがったのだ。イラッとした私はコッソリと勃起中枢神経をいじってやろうかと思ったが、恐らくカオリちゃんに気づかれると思って止めておいた。
いつか必ずこのお返しを桧山さんにしてやると心に誓った夜だった。
翌朝、しょんぼりしている桧山さんを見た私は気になって聞いてみた。
「昨夜はハッスルしなかったんですか?」
すると、
「爆睡してるのに抱けるかよ…… お陰で目が冴えたまま寝れない状態だよ…… 朝は絶対に涼子が嫌がるから…… でも涼子は風呂に入らなくてもいい香りがしてるから気にしなくても……」
クッ! まさかの私の妄想を刺激するワードが漏れ聞こえてきた…… いい香りがするのか…… さすが、
妄想で我慢するんだ、私よ!
夫婦の生々しい話を聞かされてしまったが、それでもブツブツ言う桧山さんを見てちょっとだけ溜飲が下がった私だった。
ちなみに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます