第8話 わたくしとアイドル
無事、アイドルユニットを組めたわたくし達の初ステージは国王陛下のお誕生会になりました。
本当は、学園の入学式が良かったのですけれど、まだまだ入学まで年月がありますものね。
これも下積み修行ですわ!
まずは国王陛下のお誕生会にいらっしゃる方々のハートを鷲掴みにしてアイドルという存在を知らしめるのですわ!
ユニット名は皆様の好みのが違いすぎて散々揉めた末にわたくしが独断で決めさせていただきました。
ですが、わたくしには名付けセンスなぞ皆無ですので六名ということでシックスと決めさせていただきました。
この世界は英語ではないので許していただきたいですわ。
前世同じ日本人のアイドルオタク、サリュエル様からは白い目で見られましたが…。
そんなこんなでお披露目に向けてのレッスン中ですわ。
国の最高レベルの振り付け師と作曲家、作詞家にお願いしてわたくしのイメージをお願いしてわたくしにとって完璧な曲が出来上がりました。
そしてわたくしがアイドルユニットをお願いしたのは国の将来を担う優秀な方々。
物覚えも良く皆様、お歌もダンスもとてもお上手ですわ!
先生のご指導の賜物ですわね!
でも、なにかが足りない。
皆様のレッスンを見ていても熱くなれない。
前世でのライブと何が違うのでしょう?
皆様とても素敵ですのに、なにかがたりないのです。
あのライブでの煌めきは、どこへいってしまったのでしょうか?
わたくしにとってのアイドルは、夢や希望を与えて生きる活力を与えてくださる尊い存在。
BD特典のツアー中のリハでのアイドルの苦悩も知っております。
雑誌等のインタビューも欠かさず読み込み、何に苦労したか、楽しかったか思い出深かったか。
アイドルという存在を知っているつもりでしたのに、わたくしは何も知らないのかもしれませんわ。
わたくしは、最前列で汗水流して歌い踊る皆様を見ていても何も熱くなれないままでした。
いいえ、出来合いはとても素晴らしいものでした。
問題はきっとわたくしの心なのです。
「ロゼッタ嬢、私達のステージ、どうだったかな?」
アトリオ様が汗を拭きながら訊ねてこられます。
「皆様、とても素晴らしかったですわ!お歌もダンスも、どれも完璧ですわ!」
パチパチと拍手をして賛辞を送ります。
「…本当に?」
アトリオ様は時々鋭いですわ。
「アイドルって最初はどういうことか分かんなかったけど、やってみたら意外と楽しいのな!」
踊りきったグラン様は爽やかな汗を流されております。
お一人だけ、青春!という感じです。
ですが、その姿には心が満ち足りました。
そうです。
アイドルは嫌々やっていただくものではなく、ご本人も楽しんでいただかなくては。
アルフォンソ様は不安気に何度も失敗したステップを自主的にまだ練習なさっています。
トレント様はレッスンが終わるとすぐさま座り教典を読んでおります。
ランバートお兄様はわたくしがお教えしたファンサに興味津々で独自に組み替えたりしております。
皆様各々というかトレント様を除いて熱心に活動してくださっております。
「何かが足りないですね…」
同じ前世アイドルオタクのサリュエル様はわたくしと同意見のようでした。
「わたくしもそう感じておりましたの」
何かがなんなのかはわかりません。
皆様、立派にアイドル活動をしてくださっております。
歌もダンスもファンサも完璧で、国王陛下のお誕生パーティーでは拍手喝采でしたわ。
何がたりないのでしょう?
前世でのあのライブでの高揚感が感じられない。
わたくしの好みによるイケメン編成で、好みの曲と衣装でステージに立っていただいたのに、何かが物足りない。
その何かが見つけられないまま、楽しみにしていたはずなのに、空虚な学園での王子達によるアイドルステージが披露されました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます