乙女の声、戦士の歌声

鏑木レイジ

第1話戦士のまどろみ

カフェテラス。


まどろみから覚めた、その昼下がり。


僕は、荒野を旅していた。


様々な苦しみを、この背に背負って、失望の残骸が、山と積まれた戦場で。


あの頃の思い出、


幸福のカフェテラス。


君はにこっと微笑んだ。


僕の手には今は何もない。


そして、光の先には、トンネルを抜ける道が見える。


かすめ取る。神様、と言って、でも、神は答えない。


至福の余韻が過ぎ去る、また、僕には何もない。


僕に人を殴ることの、痛みが伝わる。それは、叱責、諭し、決して暴力ではない!


プラカードを掲げて歩くこと、そこで掲げるプロバガンダ。


それが、どのようなものであれ、叫びであることは間違いない!


決して、けっして傷つけず、傷つけるのなら、恐れることを知らなければいけない。


神ではない。自分自身の聖なる怒りだ。


感情の摩擦が、擦り切れる、血の痛みが、届かないのなら、カフェテラス。


至福の余韻は届かない。


絶望の中で咲く孤独なひまわり。日差しを浴びて、太陽の向く方へ走っていく、至福の中の青いピエロはもういない。


今いるのは、武器を持たない武器商人、そして、光の向こう側にいる、淡い恋心。


僕は、これで憧れが、消える。でも、新しい歌、そう、悼む歌、向かわなければならない。


太陽に背を向けてでも、暗闇を潜り抜け、友、恋人、家族、そして、自分自身の聖なる、意識の中の、聖者、静寂の痛みへと向かって。歌は終わり、また続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る