皇帝陛下の遺書
遺書の封にはしっかりと『自裁を
遺書の封はいつもゲナイオスが皇后アレクシアに贈っていた手紙を
確かに遺書の封からはどことなく香りが
その香りに
遺書を読む前から感傷に浸ってどうするのだ。私は。まずは無心に徹しろ。頑張るのだ、私。
新しい皇帝としてコンスタンティノスは自身に叱咤激励する。このまま行けば涙声になって遺書をまともに読めなくなるであろうから。
開けられた封から何枚にも重なり3つ折りに
畳まれた紙を開くと、コンスタンティノスの目にはびっしりとゲナイオスの字が書かれているのが
ああ。父上はやはり父上だ。とても線が細い字で一見
コンスタンティノスはゲナイオスの字を涙で濡らして崩してなるものかと遺書全体に防護魔術を掛ける。これで涙で文字が
「では、読ませていただきます」
コンスタンティノスが遺書を読み始めるという宣言をし、噛みしめるような声で
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
これを読んでいる諸君。諸君らに
この事を痛感したのはシアの葬儀を挙行してから
時を
故にそれを思い知った時から徐々に執務の実権をコンスタンティノスに引き継ぎ始めた。そして、シアが愛したこの国の
幼き日のシアとの思い出。少年期、少女期のシアとの思い出。婚礼の日のシアとの思い出。
自死を考えついたのは1月ほど前である。シアにどうしても会いたい。であるならば、この
そうと決まれば、
コンスタンティノスよ。その
カロリナよ。その
マウルスよ。その武勇でどうか、どうかコンスタンティノスの敵を排してやってほしい。
シンシアよ。その知性でどうか、どうか、このグリアーチュア帝国とテュルーキア帝国の友好の道を切り
デリアよ。その探究心でどうか、どうか君の未知を既知にし、このグリアーチュア帝国の最先端の研究者を導いてやってほしい。
イウフェニアよ。その貞淑さでどうか、どうか新たな皇帝となるコンスタンティノスを夫婦共々で支えてやってほしい。
シア? 済まない。やっぱりシアがいない日々は
「うふふ。ナオ? やっぱり貴方のことだから私がいないとダメなのかしら?」
「そんなことは無い。ちゃんと皇帝としてやることはやる!」と
「でも、それはそれだけ私を愛してくれたということでしょう?
シア。どうやら
ああ、そろそろ
グリアーチュア帝国皇帝 ゲナイオス・グリアーチュア
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
やはり最後はコンスタンティノスはまともな声すら出せなかった。ゲナイオスからアレクシアに贈られる最後の恋文と言わんばかりの文面であった。
ゲナイオスの私室にいる面々。いい歳した大人の面々は皆、目から大量の涙を
ゲナイオスがアレクシアを
ああ。この遺書を読む前に防護魔術を掛けて良かった。
コンスタンティノスは遺書を読む前の自身の判断を褒め称えるより他なかった……。
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