大好きだったおじさん
岸亜里沙
大好きだったおじさん
僕は物心ついた時から、おじさんに育てられていました。
僕には両親がおらず、おじさんがいつも僕の面倒を見てくれていました。
似たような境遇の子たちも一緒に暮らしていましたが、おじさんはみんなを大事にしてくれていました。
暑い日は空調を効かせて、過ごしやすくしてくれました。
大きな広場で、みんなと遊ばせてくれました。
しっかりと栄養が取れるようにと、食事にも気を使ってくれました。
ゆっくり休めるようにと、フカフカのベッドも用意してくれました。
僕はとても幸せでした。
ストレスもなく、楽しい毎日を送っていました。
だけど、突然おじさんとの別れがやってきました。
大きなトラックがやって来たかと思うと、一緒に過ごしていたみんなを、次々とトラックに乗せはじめました。
僕は泣きながらおじさんに助けを求めましたが、おじさんは何も言わずただこちらを眺めていました。
「では、お願いします」
おじさんはポツリとトラックの運転手に呟きます。
「分かりました。しかしさすが、A5ランクのブランド牛だ。毛並みも、艶が違いますね」
トラック運転手は、僕を見ながら言いました。
ああ、僕たちは出荷されたのか・・・。
大好きだったおじさんが、初めて悪魔に見えました。
そして僕は、この短い生涯を終えました。
大好きだったおじさん 岸亜里沙 @kishiarisa
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