開幕 プロローグ|主演:俳優天十郎|
主演:俳優 天十郎が恋に落ちた瞬間を語る
正直、恋に落ちるなんて幻想だと信じていた俺が、この瞬間を味わうなんて思いもしなかった。
それは…。
紹介された専属のライターとの顔合わせのために訪れたホテルのフロントでの事だった。
彼女は俺より十歩ほど離れた場所から、ホテルの部屋の鍵を僕に差し出し
「亜麻 天十郎(あま てんじゅうろう)さんですか?私は夏梅(なつめ)と申します」と声をかけて来た。
俺はてっきり男性を紹介されたと思っていたので「女性なの?」と思わず声を出した。その俺を彼女は真正面からじっと見つめた。
気が付けば彼女の手を掴んで走って部屋まで行き、彼女を抱えたままベットの中に駆けこんでいた。
俺…なにをやってんだ?
不思議であり得ない事が起こっている。彼女は、黙ったまま僕を見つめていたが
「あの…」
彼女の唇が小さく動くと、くすんだ無重力の宇宙に漂う万華鏡が色と輝きを変えながら迫って来た。
耳が熱くなる…。苦しい…。落ちていく…。息が出来ない…。
しかし次の瞬間、今までのすべての出来事が、この出会いのためにあった事を悟った。苦しさは心地よさに変わり穏やかに全身を覆っていた。
思わず「シィ」彼女の唇に人差し指をあてた。
たぶん彼女が少しでも嫌がったら、抑えられたかもしれないが、その時の俺はその唇からそれらのすべてを流し込むことだけに支配され、彼女をさらに強く抱き寄せていた。
彼女は、柔らかく俺に身をゆだねてその時間を共有していた。
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