第5話 超能力者とグラベル連合王国の勃興
ジョン・クラーク著『オカルトと現実世界の拮抗 第2章 超能力者とグラベル連合王国の勃興』より一部抜粋 ―――
この世界には、数多くの超常能力者がいる。
魔法使い、中央山脈の修行僧、死霊使い、気功師、そして……超能力者。
彼らの数は決して多くは無いし、己の知識や技術、能力を秘匿する者が今なお多いため、生涯で一度も出会わないことが一般的……だった。
その常識が一変したのは、ある天才が『超能力を引き出し強化する論理的なメソッド』を発表したことによる。
はじめは無論、荒唐無稽なオカルトとして一笑に付されていたが、その天才がインターネットで全世界にそのメソッドの基本部分を分かりやすく公開したことにより、頭の柔らかい一部の大人と、多くの子供たちが、物は試しとメソッドに基づいた訓練を行い……全世界に多くの超能力者たちが生まれた。
超能力が発現したのは約10,000人に1人で、多くは若年者。
先進国の人口の多い主要都市ほど発現率が高い傾向があり、これは最初の情報流布にインターネットを用いたことが主因とされているが、例外が非常に多く、未だ多くの議論の的となっている。
当時の発現者の能力強度は、強い者で小指の爪ほどの小石を数㎝浮かせる程度だったが、人間種の能力が拡張された歴史的発見として、世界は大いに熱狂し、少数の危惧を訴える声は黙殺され、各国家から一個人に至るまで、こぞって研究し、訓練を行った。
各国の研究者が連携して成果を発表し、訓練を効率化する方法が徐々に一般化することで、在野の超能力者の能力が少しずつ強まった。
また国家事業として生み出され、超能力を強化されたごく少数の者による特殊部隊が現れ始めた。
法と無法、発現者と非発現者、正義と正義、そうした諍いが起こり……超能力者たちが影に日向に、暴力を振るう時代が始まった。
世界には少しずつ超能力者たちによる暴力と混沌がはびこりはじめ、メソッドの提唱者であった天才は、その混沌のさなかに自ら命を絶った。
傍若無人に振る舞い始めた超能力者たちに対抗するため、陰に隠れていた他の超常能力者たちもごくわずかながら、姿を見せ始めた。
そんな中、グラベル連合王国の貴族にして研究者であるジョージ・ペンドルトン博士のもとに、それまでとは一線を画する、非常に強力な超能力を持った4人の若者が生まれた。
1人は"フェニックス"。音速をゆうに超える速度で飛行した。
1人は"レディ・シャドウ"。周囲を闇で閉ざした。
1人は"ワーウルフ"。凄まじい肉体強化により、1個師団を半壊させた。
1人は"イレイザー"。すべての超能力を無効化した。
グラベル連合王国は他国の例に漏れず、近年の治安の悪化が大きな問題となっていたが、彼ら4人は『スターズ』と名付けた治安維持集団を結成し、少しずつ増え始めていた超能力犯罪者たちに立ち向かい、国内秩序に劇的な安定をもたらした。
のみならず、ペンドルトン博士の研究所から次々生み出される超能力者たちによる『スターナイツ』を結成し、他国の要請に快く応じてこの騎士団を派遣し、訓練に協力したことにより、約10年の時を経て、世界は安定を取り戻し始め、グラベル連合王国は強力な発言力を持つ強国となるに至った。
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