お嫁さんの君

@oooopa

第1話 入学式と君

 桜薫る季節、僕はこの田舎では人気のある、月乃宮高校に入学を果たした。

 この高校に進学をした理由は、ある言い伝えがあるからだ。

 その言い伝えとは、高校3年間で一度でも交際をすれば、その相手と必ず結婚ができるというものだ。

 そう、僕はただ運命の相手を探すためにこの高校に来たのだ。不純な理由だとは思う。だけど、思春期の男子には仕方のないことだ。

 なんてね。本当の理由は、この高校に僕の許嫁がいるからだ。高校選びも、許嫁がいる高校にしろと親に言われ続け、この高校に入学をした。

 けれど、僕はこの許嫁には反対だ。昔、良く合わされてはいたが、いつも振り回されていたし、自分の気に入らないことがあればすぐに泣いていたからだ。

 そう、僕の許嫁は我儘なのだ。どうにかしてこの許嫁を取り消したい、この高校を選んだ理由の一つでもある。

 このことばかり考えていると、すっかり時間が経ってしまっていた。そして、高校の始まりである、入学式が始まっていた。

 「新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。校長の小池です。これから過ごす高校3年間で大変なこともあるかもしれませんが、希望を抱き、目標を持って頑張ってください。」

 校長の挨拶が終わり、拍手が起こる。

 「続いて、生徒代表の挨拶です。生徒会長の楓原梓さん、お願いします。」

 そういうと、見慣れた顔の人物が体育館のステージに立った。

 まさか生徒会長だったとは、あの我儘娘に務まるのか、と思いつつ話を聞いた。

 「皆さん、ご入学おめでとうございます。先程、校長先生も仰っていた目標を持つ、これは高校3年を過ごすのにとても大切なことです。目標があれば学業、部活動にも真剣に取り組むことができます。そう言う私にも目標があります。それは許嫁である、宮地和真という人物と、円満に結婚をするというものです。本人はどう思っているかわかりませんが、私は彼が好きです。この彼は今日、めでたくこの高校に入学を果たしました。とてもカッコいい人なので手は出さないでくださいね?これで挨拶を終わります。」

 会場がざわついた。入学式初日から僕の高校生活は終わりそうだ。

 僕は自分の顔が、キャンバスのように真っ白になったのにも気づかないまま入学式を終えた。

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