第212話 我は気づいてしまった



◆竜王国編:ヘイロン(課金ガチャで当てた黒竜)side



 ヘイロンは主であるカイザル様の元を離れて竜種が治める国を探していた。


 カイザル様曰く帝国の文献では帝国北側にある山脈の中にそのあるらしいという事で、我は早速カイザル様の許可を取り北側の山脈にあるという竜の国へと向かう事にする。


 わざわざ竜の国へと訪れる理由は色々あるのだが、やはり一番の理由は『カイザル様の配下にならないか』という提案をしにいく事である。


 勿論無理強いはするつもりなどない。


 ただ、断った物に関しては『愚かな者』と見下すのみである。


 カイザル様の実力と高貴さは見なければ分からないのでそれに関しては基本的に驕り高ぶった者達が多い種族である以上、見下しているであろう人間種の配下になるなどあり得ないという者が多いだろうし、実際我に関してもカイザル様と初めて出会った時は愚かにもそう思ったものである。


 しかしながら、カイザル様の事を一目見た瞬間に我は気づいてしまったのだ。


『我が人生はこのお方の為にある』


 という事に。


 そしてそれは、一緒に旅をしていく過程で確信へと変わっていくのだが、やはり『出会わなければ気付けなかった』というのは大きい。


 だからこそ我の言葉のみでカイザル様の配下になると思えなくても、それはそれで仕方のない事であろう。


 だが、と我は思う。


 そうであったとしてもこの、カイザル様から頂いた『竜でも装着する事ができる装備品』とやらを見せれば、多少なりともカイザル様の偉大さが伝わるであろうし、なによりも装備したいと思うだろう。


 そんな事を思いながら我は山脈の上を飛んでいると、我よりもだいぶ弱いものの数多くの同種が集まっている反応を感じた為、そちらの方向へと飛んで行く。


 すると、目の前に複数の竜が我の進路を阻むように飛んでくるではないか。


「止まれ!! お前はどこの国の竜であるかっ!? どこの国からも貴様のような真っ黒い竜が我が国へ来るという知らせは来ていないぞっ!!」


 そのなかのリーダー格であろう竜が一匹前にでると、この国へ来るための理由を聞いて来るではないか。


「うん? お主たちの国はアポイントを取らなければ訪れたらいけないのか? 実に面倒くさい仕様だな……。しかしながらそれがお主たちの住む国のルールであるというのなら、こうして進路を妨害されるのも仕方がないのう……」


 我は今まで基本的に一人で過ごしてきた為このような国のルールに疎いというのは、言い訳でしかないので、そのルールに則って止められたのであればここは素直に従うべきであろう。




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