第128話 覚悟を決めるしかない

「流石にもう我も我慢の限界だ」

「………………は、はい」

「我が何を言いたいのか分かるよな?」

「……はい…………」

「ふむ、やはりヒルデガルドは賢いの。 では早速その手と口でやってもらお──」


 やはりこの部屋に来てから私はいつもと違うプレヴォの雰囲気、そして毎回必ずプレヴォの側仕えが護衛として部屋の隅で立っていたにも関わらず今日はその側仕えがいない事から覚悟をしていたのだが、私の悪い予感はどうやら当たったみたいである。


 もうここまで来れば覚悟を決めるしかない。


 そう思った時、プレヴォの動きがいきなり止まり、扉の方へ視線が向いている事に気付き、私も扉の方へ視線を向けると、そこには今まで見た事も無い気品あふれる男性がノックもせずに扉を開けて立っているではないか。


「き、貴様っ!! 無礼だぞっ!! 一体どこのどいつだっ!? 俺が誰か分かっているのかっ!?」

「ふむ、お前こそ俺の顔を忘れたのか? たしか二か月ほど前に帝国で開いた、お互いの国交を深める為に開いたパーティーの主催者だったと記憶しているのだが。 まぁ、俺はお前のような奴と違って大勢の聖王国並びに帝国の貴族相手に拘束されて挨拶し続けていた状態になる程だったためいちいち聖王国の一貴族、それも金だけ持っており貴族としてのも忘れて好きかってしている雑魚の事などいちいち覚えてないんだがの。 それで、確か前回聖王国を視察しに行ったときにここを紹介されたのだが、俺の記憶が正しければこの部屋は権力が上の者が使用できる部屋であるという認識であったのだが、いつからお前みたいなドブネズミみたいな者も使用できるようになったのかの?」


 その男性はプレヴォに対して上から物を言うのだが、いったい何者であろうか?


 そして普段のプレヴォであれば、こんな事を言われては間違いなく側仕え兼護衛の為に連れて来た使用人を複数人呼び、不敬罪として拷問の末に殺していただろう。 しかし目の前の男性に対してそれをしない事が余計に不気味に思う。


「ガイウス・ドゥ・ゴールド……皇帝陛下…………っ!? 何故ガイウス・ドゥ・ゴールド皇帝陛下が隣国である聖王国までお越しになられているのですかっ!? そのような話など私の耳には一切入って来ていないのですがっ!?」

「……何で俺がお前ごときにいちいちその事を伝えなければならない?」

「くっ、そ、それは……ガイウス・ドゥ・ゴールド皇帝の仰る通りでございますね……。 ヒルデガルドっ!! この部屋から出るぞっ!!」

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