怪談マニアなら知っていて当然の怪奇スポット、“御都久市”。都心からほど近い中小都市であるこの市にはさまざまな怪談や都市伝説があり、それらの投稿を募集する掲示板と、さらに管理人によるまとめブログが存在していたのだが——そのサイトが閉鎖され、管理人からの依頼で“私”がアーカイブ化作業をすることになったのだ。
架空の地方都市で誰かが体験した恐い事件を綴った短編集となります。その設定だけでもおもしろいのですが、直接の語り部である各話の主人公(当事者)だけでなく、アーカイブ化を担当した“私”という間接的な語り部が置かれていること。これがすばらしいのですよ。
第三者である“私”と事件との距離感は、話に付け加えられる「投稿者コメント」をもって閲覧者/読者に「のぞき見る」風情、すなわち気軽さ・気安さを演出します。そしてネットという場の有り様を巧みに映した構造、それが醸し出すリアリティを確かな見所として機能させるのです。
掲示板を眺める感覚を味わえるちょい恐なお話です。
(「恐怖へ迫るドキュメンタリー=モキュメンタリー」4選/文=高橋剛)