Re:アウェイキング

How_to_✕✕✕

プロローグ 

「キミは本当、私に似ているな」

冷静さを残しつつ、心の嬉しさを滲ませた声だった。

彼女の瞳は僕ではない何かを見ていて、その何かを見透かされているようで気味が悪く、それに真夏に近い六月の空気は湿り、夜だというのに暑くてさらに不快感は上がっていた。

自分が向けた銃はやはり撃つことはできなかった。

「まさかこんなことになるとは予想しなかったよ。キミが私の前に現れてから私の計画は全て崩れてしまった。本当に面白いよ、キミは…。さすが彼の一族の一人ということか。いや、キミはあの中でも異質なのか?」

彼女は不思議そうな顔をして言った。実に悪役らしい感じの言葉をいってくれる。

「僕はあなたのいうような人間じゃないし、一族とか関係ないですよ。それにあなたみたいな頭のネジが吹き飛んでいる人間じゃない。ただ現実に打ちひしがれて自分の殻に閉じこもって世界を憎んでいる小さい奴ですよ」

「自分のことを卑下しすぎだよ」

彼女は苦笑いするように呟いた。

「そうですかね・・・、まぁ、こんな会話も最後ですよ」

「キミは淡々というな。ドラマ性にかけるよ、全く。そういえばキミのそばにいた彼女はどうしているんだい?」

彼女は追いつめられていると言うのにいつもと同じひょうひょうとした調子で聞いてきた。「彼女は下であなたの造った作品と戦っていますよ」

「ほう私の作品とか。まぁ、私の作品は彼の作品のように元からハイスペックではないから負けるだろうね」

「あなたにしてはずいぶんと自信がないんですね」

「自信がないというよりは彼らが使い物にならないだけさ。最初から期待はしていなかったけど」

「酷いこと言うんですね」

「キミも私と似たようなものだろう。彼女を盾にして自分は戦わないなんて同じことじゃないか」

「彼女は僕の恋人であり従者であり一番の駒ですよ。だから自分の所有物をどう扱うか他人に口を挟む権利はないはずですけど」

僕がそういうと彼女はコメディを見ているかのように大笑いした。

なにがおかしいのか、よくわからず黙って彼女をみる。

「あはははははは。い、いや、やっぱりキミは私と似ている。実におもしろい」

彼女が叫ぶようにしゃべると窓の外で爆音が聞こえると同時に一瞬だけ、閃光がはしる。船体は地震がきたかのように揺れ、それにつづくようにオレンジ色の炎と煙が巻きあがるのが見えた。

揺れのせいで僕は体勢を崩しそうになるがなんとか持ちこたえる。

顔をあげ視界に彼女をうつす。

僕の目に映った彼女はまだ笑っていた。

まるでこの状況を楽しんでいるかのようで不気味に見える。

「そうか、黒百合家の娘も来ているのか・・・。なんておもしろい状況なんだ」

彼女がつぶやいた直後、僕の後ろのドアの向こう側からネズミ花火が破裂するようなパンという乾いた音。

そしてこだまする威嚇するような声。

多分、銃声だろう。

侵入者である彼女に向けて発砲したと考えられる。

もしくは黒百合家の特殊部隊に向けてなのか。どちらにせよ、この劇はもうすぐ幕引きになるのは目に見えてる。

「もうチェックメイトですよ。終わりです」彼女は僕の言葉に反応しない。

「本当に厄介な奴だよ、キミは・・・」

その一言と同時に後ろのドアが突然開く。

「××××、××だ!」

銃を武装した男たちが叫びながら突入してきた。

それに付きそうように見知った顔が三人いた。「大丈夫だったかい?」

僕の横には見慣れた顔がたっていた。

「遅いよ・・・」僕は皮肉を込めていった。「悪かったね、予想以上に手強かったんだ」「そうか、頑張ったんだね」

よく、見てみると左の上腕に傷ができていた。血が垂れていたのに気づいたがあえてそこは触れない。

視線をはずしさっきまで喋っていた彼女を見ると武装した男たちに周りを囲まれていた。

「これであなたのふざけた計画もおしまいですわね。そこの彼と従者に足下すくわれましたわね。さぁ、おとなしく投降していただきましょうか」

声を発したのは武装した厳つい男達に混じり、一人だけそこに似つかわしくない学生服をきた女の子。知り合いだが関わりたくない知り合いの一人だ。

「ふふふ、ははははははははははははははははははははははははは」

取り囲まれた彼女はこもるような笑いから絶叫するような笑いに変わる。

「なにがおかしいの?」

「終わりだって?君達は口をそろえてふざけたことを口にするね。私を捕まえたところで終わりじゃない。まだ駒は残ってる」

彼女が言い終わった瞬間、取り囲んでいた武装した男達はどこからともなく現れた一筋の閃光にバラバラに切り刻まれ、あたりは血の海と化した。僕と隣の人物、そして制服を着た知り合いだけが残った。

「黒百合家の部隊もこんなものか!つまらないな」

虚空に向かい彼女は絶叫する。人間にこれほどの声がでるのかと思うほどだった。僕は思わず驚いた。

「さぁ、ゲームを終わらせようじゃなか!」虚空を見つめていた彼女は僕に振り向く。

同時に小さな袋が破裂するような音。

その音が聞こえた直後、腹部に違和感が生じた。

「君がいると厄介だ。これから先、邪魔になる。だからこのゲームの席からはずれてもらうとするよ」

手を腹部に当てると血が出ていた。視線を彼女の方向に向けると手には携帯型のハンドガンが握られ、銃口からは硝煙が出ていた。痛いというよりなんだかそこの部分だけが冷たいような感じがする。足に力が入らず、地面に向かって顔から崩れ落ちる。

「×××!」

「×××君!」

同時に二人が声を張り上げるのが聞こえる。「君が死ぬことでゲームは終了だ。そして新しいゲームが始まる! さぁ、これで革命が始まるぞ!」

彼女の声が遠くに聞こえる。

出血量は多くないはずなのに体がすでに言うことをきかない。

当たったところが悪かったのだろうか?

考えが追いつかないうちにだんだん意識が遠のく。

瞼が閉じる寸前に見たのはこちらに背を向けて走って逃げていく彼女の姿だった。

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