察しのいいお姉さん
「ごちそうさま。美味しかった〜」
すごくお米が欲しくなったよ。
食器は外に出しとけばいいんだよね。
そして私は食べて直ぐにふかふかのベッドに横になる。
「んふぅ……特に疲れた訳じゃないけど、もう寝よ。起きてても暇だし」
寒い……いや、昨日が暖かすぎただけかな。
ゲームの世界じゃあんまり使わなかったけど、いい機会だしね、使ってみよ。
「眷属召喚」
スキルを発動させると、私の近くの闇から黒い狼が召喚された。
「久しぶり? でいいかな?」
「わふぅ!」
「あっはは、くすぐったいよ」
ゲームの時はあんまり召喚しなかったし、使い道もあんまりなかったけど、リアルならペットとして召喚するのも悪くないかもね。うん。そうと決まれば名前を……流石に私の厨二病全開の名前は可哀想かな……よし、しばらくは眷属でいいや。
「眷属、嬉しいのは分かったから、落ち着いて。もう寝るからさ。ほら布団の中にお入り」
「くぅ」
「はいはい、おやすみ」
うん。暖かくなったね。……ゲームをログアウトしたら私は一人で寝てたんだから、慣れてるはずなんだけどな、一人で寝るの。
ん、なんだろ……顔がヌメヌメする。
「わふぅ」
「次私の可愛い顔をヨダレだらけにしたら、もう召喚しないから」
「くぅん」
顔をどうしようかと考えていると、扉がノックされる。
「ティアさん、起きてますか?」
「起きてるよ〜」
「それでしたら、お湯とタオルを扉の前に置いておくので、お使いください。朝食の準備は何時でも出来ますから、食べたくなったら下に来てください」
「分かったよー」
そう言うと、何かを扉の前に置く音がし、下に降りていったようだ。
ちょうどいいね。このヨダレを早く拭きたい。気持ち悪いし。
「くぅ」
眷属が申し訳なさそうにベッドの上で俯いている。申し訳なさそうにするならベッド降りろよ。
「次から気をつけてくれればいいから」
「ワン!」
と言うかこの宿ペットいいのかな? んー、熊がいるぐらいだしいいよね。まぁ、下には連れていかないけどね。
「後でまた召喚するから、戻って」
「ワン!」
返事? をした眷属は床に沈むようにして消えていった。
ふぅ、スッキリした。ん? なんか排泄したみたいになってるね。違うよ。顔を拭いただけだよ。てか私昨日トイレ行ってないんだけど……どこに消化されてるの!? ……ゲーム内で食べたものを出したことは無いし、こういうものなのかな。無いならないでいいや。
「熊〜、朝食おねがーい」
「だから俺は熊じゃ……はぁ、もう嬢ちゃんはそれでいい」
「うん。熊さんは熊さんだもんね! ベアーベアー」
「はぁ……ミザリー、持って行ってやれ」
「お父さん嬉しそうだね!」
「ば、馬鹿言ってんじゃねぇ。早く持っていけ」
「うん!」
男のそういうのは可愛くないよ。いや、見方を変えればちょっと可愛いかな。
「どうぞ!」
「うん。ありがと」
ミザリーが料理を置いてくれたんだけど、離れる気がない。
「えっと……何か私に用?」
「あっ、そのですね? 私も一緒に食べたいなーって」
「なん――」
はっ! そう言おうとした瞬間、私は気がついた。宿の仕事。そして親が熊。導き出される答えは、友達が居ない! つまりは、私と友達になろうとしている! ふっ、私は察しのいいお姉さんだからね、全てを見通しちゃうよ。
「もちろんいいよ。一緒に食べようか」
「は、はいっ! 私の分の朝食持ってきますね!」
ミザリーは少し顔を赤らめながらも、嬉しそうにしながら自分の分の朝食を取りに行くために、熊の方へ戻って行った。
「お、お待たせしたした!」
「大丈夫だよ〜」
ミザリーが私の前の席に座り、朝食を食べ始めた訳なんだけど……会話が浮かばない。すごく気まずい。
「えっと……ミザリーって……可愛いよね!」
「ぁ、え?」
「だ、だからミザリーのお母さんってどんな人なのかなって」
うん。ミザリーはこんなに美少女なんだし、お母さんは美人なんだろうな、と思ったから聞いてみたけど……複雑な事情があったらどうしよう……それだったらさっきまでみたいに無言でいる方がまだ気まずくなかったんだけど……あぁぁぁ、もっと考えてから言えば良かった……何か会話をって必死だったから頭が回んなかったよ。……複雑な事情なんてないよね?
「わ、私が可愛いかは置いておきますが、お母さんはかなり美人だと思いますよ」
複雑な事情はないっぽい?
「へ〜……ちなみに熊さんとミザリーのお母さんの出会いを教えて頂けたりは……」
「私も知りませんよ。昔お父さんとお母さんに聞きましたけど、はぐらかされましたし」
こ、これは事件の臭いか!? 熊がこの場に居たらそう言ってやるんだけど、今はあっちにいるし、いいや。
「そっかぁ。残念。あと、今更だけど、この料理美味しいね!」
「はい! お父さんの料理は自慢です」
おぉう。ほんとに熊さんに似なくてよかったよ。
取り敢えず可愛かったので、ミザリーの頭を撫でておいた。
ミザリーは最初驚いてたけど、抵抗はしないで耳の先まで真っ赤にしつつも受け入れてくれた。
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