家族は熊じゃない?
ベッドがふかふかだぁ。あの熊……名前聞くの忘れた。まぁ、あの熊でいいや。あの熊の料理も楽しみだなぁ。ああいう熊の見た目の大男が作るご飯! 絶対美味しいよ!
まぁ、まだ夜まで時間があるし、やろうと思って出来なかった、街の探索だぁぁぁあ!
「お、出かけんのか?」
「夜には帰ってくるから、夕飯は準備しててね」
「あいよ」
ん? 待てよ……なんか私自然にこの熊がこの宿屋の主人で料理するのだと思ってたけど、一人じゃ回るわけないよね。え? てことはこの熊は料理をしない? この宿の主人でもない?
「熊さんが料理するの?」
「だから俺は熊じゃねぇって」
「名前知らないし」
「あ〜、そう言えば言ってなかったか、俺はゼフリーだ」
「そうなんだ。それで熊が作るの?」
「お前なぁ……まぁいい。お前の言う通り、俺が作るさ」
「じゃあ人手不足なの?」
「なんでそう思うんだよ」
「だって、全部熊がやってるじゃん」
「あ〜、いつもは俺の娘がここにいて、俺は奥にいるんだよ。ただ、今は買い出しに行ってもらってて居ないんだ」
なんだ。ちゃんと熊以外にも居るんだ。……ん!? 娘!?
「待って待って、熊に娘がいるの? 小熊?」
「あいつは嫁似だからちげぇよ」
「その嫁さんは熊では……」
「ねぇよ! 俺とは似ても似つかねぇよ」
「それほんとに――」
「お前の言いたいことは分かるが、俺の娘で間違いねぇよ」
「ふーん。じゃあ行ってくるね!」
「おう! 美味い飯用意してるからな」
熊に娘か〜、見てみたい気もするけど、見てみたくない気もするなー。私が帰る頃には居るだろうから、料理と一緒に楽しみにしとこ。
「あっちが冒険者ギルドだから、反対のこっちに行こう」
おぉー、こっちには野菜とかが出店で売ってるのか。卵とかチーズとか無いかな? 卵とチーズさえあれば、もう私は無敵! なんでも出来る自信がある。
無いなぁ。もっと探せばあるかなぁ? 日本にあった野菜と似たものとか結構あるし、卵とかもあると思うんだけどなぁ。あっ、あっちにはじゃがいもとかあるし。んー? なんか、じゃがいもだけ全然売れてなくない? ナスとかにんじんとかは売れてるのに。
卵とチーズが無いし、じゃがいもでいいや。
「おじいさーん、これ何?」
「ん、おぉ、これはジャガじゃよ」
……いもが無くなるんだ。まぁいいや。
「じゃあ、このジャガ一個いくら?」
「ジャガを買うのかい? 調理方法が分からないと毒になるが大丈夫かのう?」
「平気平気。てか、定期的にここに売りに来るの?」
「いや、この街で今日売ってるのはたまたまじゃよ。どの街に行っても、あまりジャガは売れないからのぅ」
「私欲しい欲しい。それでいくらなの?」
「一個銅貨1枚じゃよ」
「安っ、はい、金貨2枚でお願い」
「き、金貨2枚!? そ、そんなに買うのかのう?」
「うん。ジャガ好きなんだよね。次はいつこの街に来るの? それまでにお金稼いどくよ」
「正直、この街に来ること予定はなかったのじゃが……そうじゃのう、30日後にまた来ようかのう」
「待ってるね!」
よーし、じゃがいもいっぱいゲット! でも今日稼いだ(奪った)お金がもう無くなっちゃったよ。ま、今日はもう帰ろう。明日依頼を受けてお金を稼ごう! 頑張るぞ〜。
そして熊の肉焼き亭の前まで帰ってきたんだけど……めっちゃ賑わってるね。単純にご飯を食べに来た人達かな? こんなに大勢泊まれるわけないし。
「たっだいまー」
「あ、あなたがお父さんが言ってた、お客さん?」
「だれ?」
「あ、私ミザリーって言います」
「……よろしくね? ミザリーちゃん。私はティアだよ。それで……あ、そっか。熊は後ろで料理を作ってるのか」
「ちゃん……えっとティアさんは何歳なんですか?」
「私? 15歳だよ」
「うぇっ! 年上だったんですか……あ、私は14歳です」
「一個しか変わらないじゃん。えっ、てか待って、この美少女が熊の娘!?」
「あ、はい、熊……と言うか、お父さん……ゼフリーの娘です」
知らなかったら誘拐を疑うレベルで美少女だね。確かに茶色い髪の毛で熊と同じだけど、逆に言えばそれしか血縁者だと思える部分がない。
「まぁいいや。お腹すいたから、私も夕飯頂戴」
「はい、お父さんに言ってきますね。ただ、席が満席なので……お部屋で食べてもらうことになりますが……」
「分かった。部屋で待ってるね」
私がそう言うと、後ろに下がって行った。あっちで、料理を運んでる人も気になるけど、今は忙しそうだしいいや。
一番奥の部屋に入り、ベッドに座って待つ。
そうしていると、扉がノックされたので、入っていいよーと言うとミザリーが料理を持ってきてくれた。
「机の上に置いておきますね」
「うん。ありがとね〜」
「いえ、食べ終えましたら、外に置いておいてください。回収しに来ますので」
「分かった」
スープと肉! この肉にかかってるソースがめちゃくちゃ私の食欲をそそってくる。早く食べちゃお。
「いただきまーす」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます