ちょろすぎるイベント
「誰か助けてくださぁぁぁぁぁぁ!」
「ん?」
遠くの方からそんな声が聞こえてきた。
その声が聞こえた方向を見てみると、白い髪の、瞳の色は緑色の女の子?(んー、私より3個下ぐらいの12歳かな?)がオークナイトに追われていた。
「イベントかな。長いやつはやだなー。でも、限定イベントだろうし、助けない訳にはいかないか」
さて、助けるのは決定として、武器は何を使おうかな。オークナイトなんて正直弱すぎてやる気出ないなぁ。しかも強者の風格でステータス一割ダウンしてる。あんなの倒すのにカッコつけても虚しいだけだし、ネタ武器の魔法少女ステッキでも使うか。
魔法少女ステッキ。名前の通り打撃武器だよ。うん。全然名前の通りじゃないね。でもネタ武器だからね。
「おーい、こっちおいでー」
私は手を振りながら追われてる女の子に向かってそう言う。
「だめー! あな、たまで! 逃げて!」
「はぁ?」
そう言って女の子は私がいる方向とは逆の方向に逃げていく。
たすけてーって叫んでたのそっちなのに……
「……そういうイベントね。失敗って訳では無さそうだし、縮地」
私は一瞬でオークナイトとの距離を詰め、魔法少女ステッキで横払いし、オークナイトを吹き飛ばす。ただの棍棒でもレベルカンストしてる私なら吹き飛ばすことが出来ただろうけど、魔法少女ステッキを使ってるのであまり力は入れなかった。魔法少女ステッキにはノックバック効果が付与されてるからね。倒しても良かったけど、魔法少女ステッキで吹き飛ばすの楽しいんだよね。
「……へ?」
私は女の子の方を見ると、凄い間抜けな顔をしていた。何このNPC……こんな表情するNPC見たの初めてだ。やっぱり特別な場所だからかな? 優勝者だけの場所にこんなNPCを配置するなんて、神運営かよ!
「ここにいてね」
私は未だ起き上がれていないオークナイトの方へと向かう。
「ぶもぉぉぉぉぉ!」
「うるさいよ。はい、ボーン」
起き上がろうとするオークナイトに今度は縦ぶりで攻撃を入れると、ボールみたいに跳ねた。
「ぶもぉ……!」
「そろそろ死んで」
そろそろ飽きたので、後頭部に打撃を入れ、終わりにする。
「あれ? 終わりにしたつもりだったんだけど、まだ生きてるの?」
かなり力を込めたはずだったのに一向にドロップアイテムを落として消滅する様子がない。
私はオークナイトに近づくが、何もしてこない。
「ん〜? 特別エリアだから死体ごとゲットできるのかな?」
そう思った私は、試しに、課金して容量増加してあるインベントリの中に入れようとすると、普通に入った。ラッキー、錬金術ができるフレンドに頼めばなんか凄いの作ってくれるかも!
「あ、あの……」
後ろから話しかけていいのかな? と言った感じで話しかけてくるこの子を見て思い出した。この子を助けるためにオークナイトを倒したんだったと。
「あぁ、うん。平気? 怪我は無い?」
「へ、平気です! た、助けてくれてありがとうございましゅ!」
私が微笑みながらそう聞くと、少し顔を赤らめながら食い気味でそう言ってきた。最後に噛んでしまったことを恥ずかしがって今は耳の先まで真っ赤っかだ。
NPCすらも惚れさせてしまう私ことティアは最強だね! まぁ、プログラムされた回答なんだろうけど。
「もう大丈夫だから、落ち着こうね」
「は、はい!」
「えっと、名前を聞いてもいいかな?」
流石に名前のないNPCってことはないよね?
「は、はい。私ミュレっていいます!」
良かった。流石に名前はあったね。こんなに作り込まれてるNPCに名前が無いなんて激萎えもいいとこだよ。
「私はティアっていうの。よろしくね?」
「よ、よろしくお願いします!」
よしよし、それで私は何をすればいいんだろう。明確なクリア目標が無さすぎる。
「ミュレはなんでこんな所に?」
「え、えっと……その、お母さんが病気で、お父さんも昔に死んじゃって……でも、お金がなくて、だから……私がお薬になる薬草を取ってこようと思って……」
そこからは涙を流しながら話してくれた。要するにお母さんの病気を直せばクリアってことかな?
「何の薬草が必要なの? と言うかなんて病気?」
なんか限定イベントにしてはやけに在り来りで簡単だなぁと思いながらミュレに聞く。
「あ、えっと……分かりません」
そう言ってミュレは俯く。ほんとによく出来たNPCだよ。
「分からない物を探してたの?」
「あぅ」
「……それぐらいお母さんのことが心配だったんだね。取り敢えず、ミュレのお母さんの所に案内してくれないかな? 私なら直せるかもだし」
「ほ、ほんとですか!? あ、でも、お金……」
「あぁ、そういうのいいから。案内して」
どうせクリア報酬で何かしら貰えるだろうし、お金……というかゴールドなんて腐るほどあるしね。
「こ、こっちです」
そうしてミュレの家へと向かうのだった。
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