魔王と勇者が同じ器に転生したんだけど⁉︎

愉亜刺(かいと)

1章 転生と入学

1話 転生

「これでどうだ!!魔王!」


腹に力を入れて思いっきり剣を叩きつける。


「ふん!小癪な我がこの程度の攻撃で死ぬと思うな!勇者!」


最強と俺たちが言われるのは理由があった。


奴、魔王は魔法の始祖、全ての魔法が使え、そして新たな魔法をも生み出す。


勇者であるこの俺は魔法こそ使えないものの、1人一個しか持てないはずのスキルを1兆個以上持っている。


スキルと魔法、それで俺たちは互角に戦いを繰り広げていた。


  そしてこれは伝説の最後の場面だ。



「我は元人間だ。」


激しい剣の打ち合いの中、魔王は突然口を開けた。


「はっ唐突な自分語りだな。」


知っている。彼が人間だったことも、そして今は違うことも。


「最後にお前だけには言っておきたくてな… ただ魔神と同じ角を持って生まれた、それだけのせいで我は嫌われ、人間世界から追い出された。」


毎日のように戦っていた魔王の口から聞かされた知らなかった事実。


「っだがそれが人を殺してもいい理由にはならない!」


「なにを勘違いしている?我は人を殺せと部下に命令したこともないし、自分で殺したこともない!!」


嘘だ!そう思いたかったが、表面心理が読める俺にはその言葉を嘘だと断定することができなかった。


「ならなぜお前は、」


「知るかそんなこと!!こっちが聞きたい!なぜ我が人を殺したと噂されるのか、我とお前は同じく力を持って生まれてきたのに、角がある たったそれだけで 魔王 と畏怖や嫌悪感を覚えられる対象となり、お前は 勇者 と称えられる対象になった。俺はお前がどうしよもなく羨ましくて、妬ましい。  だから我はもう疲れた。これで終わりにしよう。さぁ我を殺してみろ勇者。それで生き残ったならば、それも運命・・・そうだ、その時は全てを滅ぼそう!さぁこい勇者!!」


俺は、俺はどうすれば…


「早くこい!人間を、宇宙を滅ぼすぞ!!」


「ぐっ…おぉぉー」 


『剣術:リミテッドスラッシュx』


いま放てる最強の一撃を叩き込む。


魔王は攻撃を防がなかった。


「ふんやっと解放される。我は転生する。次は…次こそはみんなと仲良く暮らしたいな…来世でまた会えたなら友達になりたいな…、じゃ・・・・・な。」


そして死ぬことがない、死ぬことのできない魔王はドロリと溶けた。俺は…俺はどこで間違えたのだろうか。


「王様の言ってたことは嘘だったのか?いや違う誰が魔王を…もう誰も信用できない…そうだ死のう。」


ずっと人間とは大差ない魔物や魔人を殺さなければならないことに不信感を覚えていた。それを人助けをすることで忘れようとしてた。だが罪のなきものを殺したことは、そして大事な約束・・を破ってしまったことは俺の心を蝕んでいった。


ザクッザクッザクッザクッザクッザクッ 「なんで、なんで死なないんだぁ死ね死ね死ね死ね死ね死ね…」ザクッザク


クソッなんなんだ俺は!一体なんのための勇者だったんだ…


(新しい能力を手に入れました。)


(新しい能力 【転生】 を使いますか?)


「そんなんいらないんだよ!俺はなにも罪のないあいつを殺した!だから俺を殺せ殺せよ!!」


「落ち着いてください主人マスター!!」


「神剣のお前なら俺を殺せるか?」


「私の能力では不可能です。ですが人間を信じれなくなっただけなら転生すればいいじゃないですか。魔王は死んでいませんし、転生したのもあなたの責任ではありません。」


わからないわからない…ナゼ…


「俺はあいつを殺したみたいなものだ。人を守るための勇者の力を罪のないあいつに使ってしまったんだ。俺は勇者失格だ…」


「かといって魔王が主人マスターに死んでほしいわけじゃないのは表面心理の読めるあなたならわかるでしょう!!」


「うっだが…」


主人マスター、あなたは本当は何がしたいんですか?本当にしなければならないことは死ぬことそれではないでしょう?」


「俺はあいつに謝りたい。そして話を聞いてやりたい。とりあえずそれが今の俺のしたいことだ。」


「では転生してみてはどうですか?」


ルギクトが俺に優しく語りかけた。


「あぁ、そうだな!心配かけて悪かった。 何年後になるかはわかんないけど、未来でまた会おう、ルギクト。」


「えぇその時を心からお待ちしております主人マスター。」


【転生】


そして俺はあいつと同じ時代に転生した。したのだが…

まさかこうなるとはまだ思ってすらいなかった…

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