第2話 クルエラの場合

海のほとりである湾頭で月光に輝くひとりの婦人がいた。

その婦人は両腕のないたくましい男性の死体のそばにいたが、瞳は悲しみには満ちていない。

その目はどこか人間味がなく、普通なら逃げ出したくなるような狂気の色に染まっている。

漆黒の瞳に血塗られたような美しい赤い髪。

その女性の名前はクルエラと言った。


ふと、月光と波の影から人の姿が現れる。

ペルシャとマリーベルだった。

「あれ? 奇麗なお姉さん、そこで何をしているの?」

ペルシャがクルエラに問いかける。


「あら! 死体を海に流しているのがバレちゃった!」とあっけらかんと笑うクルエラ。

「私はクルエラ。僕たちはどこから来たの?」

「僕は海を旅する死者だよ」とペルシャは言い、マリーベルは「私はペルシャの護衛の人魚のマリーベル」と自己紹介した。

クルエラはマリーベルに「あら美しい」と言い見とれると、マリーベルはご満悦。


「ねえ、その男の人は何で死んでるの?」そうペルシャが聞くと、クルエラは「私が食べたのよ」と笑顔で答えた。

クルエラは「私は人間の男性の上腕二頭筋を食べないと生きて行けないの」と言って笑う。

ペルシャが「…そうしないと生きていけないのは何でか聞いていい?」と聞くと、「私の愛の表現なのよ!」とクルエラは興奮気味に言った。

「クルエラは愛しているから人間の男性を食べるのね」と問いかけるマリーベル。

クルエラは「そう、愛しているの…」と言って、悲しい顔をし始めた。


クルエラは自身の持つ心の底からの孤独を吐露し始めた。

「普通の人間みたいに愛することは出来ない。でも愛したいの…。だから生きるために人を殺して食べるしかないのよ…」クルエラはそう言って涙を浮かべた。

そしてクルエラはペルシャとマリーベルに魔法のように心を開いてしまった事に驚いた。


「貴方達…すごく不思議な存在ね。この私がこんな話をしてしまうなんて」と素直な気持ちを話した。

それを聞いたペルシャとマリーベルはにっこり笑う。


「そりゃ私達は神に近い存在だしね。人食い人間を裁くのは、人間しかいないわよ」とマリーベル。

ペルシャは「人間なんだからたまには感情が出るさ」とクルエラに対して笑った。


「さて、死体の処理もしたしかーえろ!」

上弦の月の光に照らされたクルエラは、空に輝く金星のように光り輝いて笑う。

それはクルエラが人間の男性に取っては死の女神であることを表すようであった。

「またねペルシャマリーベル、私の守備じゃないけどもあんたたち気に入ったわ! また会いましょう!」

クルエラはそう言って、月の闇夜に消えて行った。


ペルシャとマリーベルは「いい食人鬼だったわね、殺されてもあっさりしてそう」と言って微笑み合う。

その日も美しい月夜の海には漁火が灯り、海に幻想的な空間を生み出していた…。

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