アイドルのマネージャーになりました。
@harukaakito777
第1話【おじさんですけど】
日付も変わり布団に入る。
音もなく静かなこの暗闇に光るスマホの液晶を見る。
「俺も今日で40歳か、ちゃんとオジサンだな。」
祝ってくれる相手もいない誕生日、今年で14歳になる娘がいるが、10年前に離婚してから会ってない。
「寝るか。」
明日は趣味でやっている剣道の試合のため上京する、飛行機に乗るのも久しぶりだ。
誕生日に予定があるのは良かった、やっぱりちょっと寂しいからね。
朝を迎え準備をする。
時間になり空港へ向かう、先に来ていた仲間と合流し飛行機に乗った。
時間通りに羽田空港に到着、地元の空港と違って大きく、色々な店もある。
他の場所に行かなくても、ここで一日過ごせるなと来るたびに思う。
出発時に預けた荷物を引き取り、到着ロビーに出た。
人の多さに戸惑うが、それもすぐに慣れる。
仲間の一人がバスの手配をしていると、女性の悲鳴のような声が聞こえた。
声の方角に目をやると刃物のような物を構えた男と対峙する二人の女声が目に入った。
別に正義感なんか無い。
ただのおじさんだし。
それでも体は動いた。
竹刀を持ち、男に向い走る。
幸い相手の男は気づいていない。
あと3mで射程圏内にはいる所で男に向かい声を発する。
「おい!」
男は驚いた表情で俺の方向に首を向ける。
射程圏内に入った俺は竹刀を相手の手首に向かい振り下ろす。
「コテぇっ!!」
刃物を持った右手首に命中、刃物を落とし、少し腰を落とした相手の頭に再度竹刀を振り下ろす。
「面っっ!!」
男がうずくまった所で刃物を蹴り男から遠ざける。
誰かが呼んでくれていたのだろう、警察が来て男を取り押さえた。
「大丈夫でしたか?」
刃物を向けられていた女性たちに声をかける。
「はい、本当にありがとうございます。」
その女性たちの連れであろう男性たちが、彼女らに駆けより無事を確認していた。
もう平気そうだなと思い立ち去ろうとしたところ、警察官に声をかけられる。
「すいません、ご協力感謝します!少し調書を取らせて頂きたいのですが、交番までお願いできますか。」
面倒ではあったが交番まで出向く、仲間には先に向かってくれと伝えた。
交番につくと先程の女性たちも話をしているようだった。
警察に状況を伝え、説明を終える。
人助けではあるものの、やりすぎだと判断されてしまうとこっちも罪になる可能性があるとの事で、少しだけ注意され軽くヘコんだ。
調書も終わり交番を出た所で先程の女性たちに声をかけられた。
「先程は本当にありがとうございました、ぜひお礼をさせてもらえませんか?」
「へ?いやいやお気遣い無く、おじさんなりにやれることをやっただけなんで、お気持ちだけ頂戴します。」
「おじさんだなんて!凄くかっこよかったですよ!!」
(いやいやただのオジサンですから。)
心の中でツッコミを入れる。
そんなやり取りをしていると、男性から声をかけられる。
「突然失礼します、私、彼女たちの会社の者で駒野と申します。この度は本当にありがとうございました。」
「いえ、ご丁寧にありがとうございます。私、関口と申します。お二人がご無事で良かったです。」
「ぜひ、お礼をさせて下さい。関口さんに会ってお礼を言いたいと私の上役も行っておりますので、お願いいたします。」
なるほど、お礼しとかないとこの人が面倒なことになるのかもしれないな。
素直に厚意を受け取ったほうが良さそうだ。
「わかりました。ではありがたくお受け致します。」
「ありがとうございます!では本日の夜はいかがですか?」
「大丈夫です。」
「では後ほど連絡させて頂きます。連絡先を伺ってもよろしいですか?」
連絡先を駒野さんと交換し、ホテルへ向かった。
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