第四五話 騎兵隊の到着
旧城塞でもあったカストルム牢獄が未明に陥落してから半日ほど経ち、厳戒令を告げられた住民達が戦々恐々とする中、ベルクスの首都駐留軍で中隊指揮官を務めるアルバは悲嘆に暮れていた。
(物騒な前線送りにならず喜んでいたら “これ” かよ、
このまま一度の衝突もなく、牢獄内部に保管されている食料や抵抗勢力の持ち込んだ物資が尽きれば良いものの、その可能性は限りなく低い。
座して死を待つよりは玉砕を選ぶのが普通であり、現状に
いざという時に決死の覚悟で封鎖を維持するのは自分達だと、横列陣形で中型盾を構えた兵卒らも
「まさに貧乏
「ちッ、一昨日にケチらず、娼婦を抱いておくべきだったぜ」
「狐のお宿か? 任務明けに行けば良いだろ、縁起でもない」
やや
一応、普段なら注意対象となる
(それにしてもまだ攻めて来ないのか、 まさか牢獄襲撃は
眉を
首都近郊の森林地帯には人目につく街道を避け、道なき道を潜行してきた北西領と南西領の遊撃部隊が
二領併せて
静かに高まる眷族の戦意を感じ取りつつ、
「グォル ヴァアオァウ、ウォルグオゥ (
「ワフ、ウァアオ ガォアウゥ (あぁ、いつでも
既に完全獣人の姿へ転じた黒狼が口端を吊り上げ、先ほど組み上げられたハンマー型の破城槌[重量50㎏]を軽々と肩に担ぐ。
鋭い牙を
「ガゥッ、クルァオォ、ガルァアオフ “ヴルガゥア” ウォルファウ
(ははッ、良いなお前、どちらが先に “門を壊すか” 勝負といこう)」
「グウゥ、ガルアァオウ、ウォオウゥ ガルゥ ルォオヴルァア?
(面白い、受けて立とう、折角だから隊内の酒でも賭けるか?)」
勝手に物資を持ち出そうとするガルフを見咎め、主計係の魔女レミリが止めに入るも、双子の姉であるもう一人の副長リアナの歓心は別に向いており、不謹慎な同輩を諫める気配はない。
「ッ、クラウド様の成分が足りない、可及的速やかに合流しないと……」
「姉さん、それ… 全部終わってから」
しれっと苦言を挟んだ妹とて、一兵卒に過ぎなかった自分達を気に掛け、将校に抜擢してくれた大隊長の吸血騎士には好感を持っている。
故郷の村がベルクスの開拓民に襲われて両親や隣人を失い、腹底に冷酷な憤怒を抱えていた姉が心配で入隊した経緯もあるため、出世に伴って死亡率が低下するのは大歓迎なのだ。
(…… 責任は増えるけど、仕方ない)
そこは最善を尽くすだけなので、他に問題があるとすれば、姉妹の想い人が吸血鬼の振りをした
恐らく吸血姫エルザの
(軽率に指摘したら… 消される、かも?)
真祖に近しい “
魔人族の小娘が
「うぅ、知らなかった頃に戻りたい」
「どしたの、レミリ?」
「ん… 何でもない」
「そう、なら状況開始といきましょうか」
身内の隠しごとくらい
自身も控えさせていた愛馬に跨り、妹が
「ルォア クァヴルァアウ! ウォオッ、グォアァ!!
(先ずは首都門を落とす! 征くぜッ、野郎ども!!)」
「「「アォオオォオ――ン!!」」」
森林地帯に遠吠えが響き、主戦力を担う
言わずもがな、
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部隊紹介 No.2
部隊名称:北西領軍第二大隊
部隊指揮:クラウド
部隊副長:リアナ(第一中隊長)
ガルフ(第二中隊長)
部隊人数:総勢500名(※首都にいる先遣隊は250名前後)
種族構成:魔人族
必須技能:基礎体力
走破能力(犬人)
馬術(魔人)
授与称号:強襲兵・魔杖騎兵
制式武器:鉄剣・鉄槍
魔杖・短弓
制式武装:軽装鎧
小盾・中型盾
徽章付き外套
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