第四二話 戦争捕虜の数がいれば将校も混じっていて然り
「さてと、正門付近の勝負は
「腹の矢傷は痛みますが、
「なら、負傷者を連れて二階の機械室に上がりなさい」
「クラウドの旦那らと交代して機械の操作ですかい?」
“まぁ、跳ね橋も板金格子も当面は上げたままでしょうけどね” と、赤毛の騎士令嬢が付け加えながら、繰り出された守備兵の剣戟を
幾つもの
二度ほど刃を打ち合わせた後、袈裟の斬撃を水平に構えた得物で受け止めてから、半身となることで僅かに詰めたアリエルは接点を軸として、横方向に剣身を三分の一回転させた。
鉄剣の刃が彼女の側面を流れていく一方、斜に構えられた連接剣の刃が相手の首筋に押し当てられる。
「ぐぅッ!?」
動脈を引き切られそうになった守備兵は慌てて
薄く微笑んだ騎士令嬢は少し距離が開いたのを利用して、近接状態から狙い澄ました平突きを放ち、
「ぐぼッ、うぅ… ぁ……」
「ちょっとだけ遅かったね、残念♪」
喜悦混じりの呟きは
「あんまり、戦いに享楽を持ち込むのは賛同できないよ、アリエル」
「あら、獰猛な人狼族のお姫様に言われるのは心外ね」
一次的に最前列より身を引いて振り返れば、狐娘のペトラが少々不機嫌そうに尻尾を揺らしていた。
好戦的な性格が似ているとは
ただ、
「さてと、こちらの増援も来たことだし、私は中庭の準備にでもいきますか」
「ん… 牢獄内の制圧は引き受けた、すぐに終わらせる」
手勢を率いる頭目同士の
「…… 分かり易くて結構だが、死んだ将兵に申し訳ないと思わないのか?」
「攻めてきた貴様らがそれを言うかッ、すべてお前たちのせいだ! 兎も角、私の身柄さえ安全なら、後はどうでも良い!!」
不貞腐れた態度で吐き捨てる
無抵抗で囚われた中年貴族は開口一番に降伏してきたので、まだ名前すらも分からない。これで真っ当な交渉材料になるのだろうか?
(簡単に誰かを切り捨てる奴は、自身も捨て駒にされるからな……)
何やら拍子抜けした感を抑えて、
既に抵抗勢力の面々は戦争捕虜の釈放を進めており、粗末な布地で仕立てられた囚人服姿の者達が説明を受け、中庭へ移動するように指示されていた。
都合よく見つけた虎獣人の
防衛塔にいた守備兵達から矢雨を降らされたのも過去のこと、何処かの
「ん、欠けはないね、お疲れ様~」
貸し預けた
彼らは多数の荷車で持ち込まれた当座の物資を
「身内
「壁外から武器を空輸したのは私達だからさ、少しの役得くらいあっても、罰なんて当たらない気がするけどね」
「戦う意志があるなら武器を取りなさい! ただし、数が足りない、自前の
「…… それは別に構わないのだが、少し聞かせて貰いたい」
呼び掛ける言葉に応じて、歩み寄ってきた群衆の中から
数秒ほど待てば肩を支えられつつも、六枚の羽根を持つ熾天族の女性が現れて、鋭い視線を投げてきた。
「中央で一個連隊を任されていたディア・ストレインだ、見苦しく
「えぇ、直接話すのは初めてね」
さらりと返した
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