第四一話 開けたら閉めましょう
なお、巻き上げ機構の鉄鎖は天井に
「構造的に動滑車がないのは
機械に取り付いた吸血鬼らが腕力で押さえを利かせ、跳ね橋が急激に落ちないよう注意する姿を
正門前に集った
その先頭に立っているのは何を隠そう、狼が混じった狐娘のペトラと、
既に完全獣人化して臨戦態勢の眷族を従えた彼女は目聡いと言うべきか、琥珀色の視線を向けて窓越しに
「早く落とし格子も上げてッ!」
「ガルゥッ、ヴォルアォオオ!!(はッ、暴れさせて貰うぜ!!)」
「グゥ、オファウ…… (もう、待てねぇ……)」
何やら取巻きの人狼達が威勢よく
それよりも、現状に
「ッ、時間的な余裕など無いか」
現状把握と共に
ここまで至れば最後に残るのは門扉のみであり、もう一度窓の外を見遣ると陣頭に立つ狐娘に手招きされて、正面に向かう精悍な
「多分、鉄心入りだと思うけど、ぶちかませる?」
「グゥオウゥウ ブォオオゥウ、ヴォ (我らの膂力を見くびるなよ、小娘 )」
「ブルォオオゥウッ!! (一撃で終わらせる!!)」
小首を傾げた人狼公の娘に応じて、口端を釣り上げた牛人らは一歩を踏み出すと、引き
「「グォアアァ———ッ!!」」
渾身の力で振り下ろされた鉄の塊は門扉を大きく歪ませ、裏側に抜けた衝撃が
それとほぼ同時に左右の壁面に設けられた殺人孔から、勢い良く鉄槍数本が飛び出出したものの… 勝手知ったるなんとやら、元々は部族国が管理運用していた施設なので、青銅公監修の仕掛けは周知されている。
台座で角度を付けた孔から伸びる複数の切っ先に向け、二頭の
「ウグルォオ ヴォグウゥオオゥ (
「グォ、ウォオオゥ (ま、想定済みだ)」
少々得意げにも聞こえる牛人族の言葉に苛立ったのか、板金仕様の腕盾に阻まれた鉄槍が荒々しく引き戻されるのを見逃さず、素早く滑り込んだ
「「「うぁ…ッ、うぅ……」」」
くぐもった呻きが微かに漏れ聞こえる中、再び突撃した二頭が鉄槌を喰らわせることで、強引に門扉をこじ開けた。
「皆ッ、あたしに続け!」
「「「うぉおおぉお――ッ!!」」」
気勢を上げた抵抗勢力の者達が狐娘に先導され、
一番槍を取るべく狐尻尾など
「…ッ、やるね」
「ただでは斬られん!!」
先に仕掛けた友軍から見れば、最後尾にいた守備隊長は水平に近い角度で長剣を
その攻撃を半身になって躱しつつも、蹴り足を左腕で抱えた彼女が右手の湾曲短刀を一閃すれば、怒声の飛び交う通路に血飛沫が跳ねた。
「ッ!? げはッ、あ… あぁ……」
喉元を深く薙ぎ払われ、
本来なら各
実際、娼館主の
「グルォ ヴァルオォッ! (俺の憤りを受けろッ!)」
「ウゥオァア、ガルァアアッ!! (もう一発だ、おらぁああッ!!)」
そんな彼らの声にぴくりと狐耳を振るわせて、やや呆れ気味な表情のペトラは後列から繰り上がってきた新手の斬撃へ踏み入り、右手の湾曲短刀で遠心力が働き
肉食系獣人の
「うぐあぁああッ!!」
「ん、戦いは無情……」
小さく呟いた狐娘が守備兵より身を離すと、脇腹から斜めに刺された刃が致命傷を負わせたのか、立つことも
「くそッ、隊列を維持できない」
「王城からの援軍はまだかッ!?」
もはや数的優位さえも崩れてしまい、焦りを滲ませた彼らに
取り残されるのは冗談じゃないと、逃げ遅れたベルクスの兵卒らが外堀に飛び込んだ今、カストルム牢獄の守備隊に救いの手は差し伸べられず、形勢の天秤は一気に傾き始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます