第十六話 老執事と老騎士
露払いの屍鬼が負傷も
「
「ッ、うぉおおぉ!?」
武骨なガントレットに覆われた右拳が凄まじい勢いで騎馬へ叩き込まれ、防護用の前面装甲をへしゃげさせて、心臓にまで重い衝撃を伝える。
踏み留まれずによろけて
金属同士の奏でる不協和音が響き、火花が散って消える僅かな時間、二人の
「…… やるではないか、御老体」
「はッ、どれだけ生きているか不明な貴様らに言われたくないわ」
売り言葉に買い言葉を返せども…
「うぐぅッ!!」
呻いて後退しながらも大剣の切っ先を向け、追撃してくる老執事を牽制した瞬間、大剣の腹に右拳のフックが炸裂する。
人外の
打突の刹那に腕を
そこに装着されていた腕盾で渾身の一打をいなし、攻撃の隙に乗じて剣柄を右掌に把持したまま、相手のお株を奪うように殴り掛かった。
「ぬぅッ!」
単体では
「はがッ!?」
曲芸染みた動きに翻弄され、
「五臓六腑を砕け、
「ッ、ぐッ……ぅ……」
身体を貫いた鎧越しの衝撃に耐えられず、吐血して両膝を突いた武人に向け、短い賛辞の言葉を添えて振り下ろされた必殺の拳は……
割り込んできた
「…… 若造、何のつもりだ」
「レイノルド卿、可能なら身分の高そうな者は捕縛する手筈だろう?」
人質交換や交渉材料に用いるため、事前にエルザと話し合って決定した際、一度は納得していた御仁が表情を
その様子を
「ッ、い、生き恥を……
「私とて礼節を欠くつもりは無い、
「…… 主命より重いのか、それは?」
「ぐうぅッ、
苛立たし気に “鋼鉄” の吸血騎士が吐き捨てた言葉を聞きつつも、注意が
「ん~、容赦が無いですね、クラウド様。でも、こいつらに生きる価値なんて……」
小さく呟いた副長の魔女リアナが手を伸ばして、まだ息のある敵方の従騎士を狙い、魔弾を撃ち出そうとする。
「無為な殺生は避けた方が良い」
「…… “余計な価値観を排したら、命に差なんてない” でしたっけ? そう言って人間だった頃の貴方は、冷酷に焼き払われた同族の村で、生き残りを助けたと聞きます」
収束させていた魔力を消し去り、濁りの薄らいだ瞳を向けてくるが… それは亡き
それでも、この場を
一息吐いてから戦況を
もう一押しすれば戦意を失い、蜘蛛の子を散らすかのように敗走するだろう。それは
「勝負に水を差された留飲、下げさせて貰うぞッ」
「単なる八つ当たりでは?」
「多分、な……」
若干、引き気味の屍鬼兵や獣人槍兵らが腰砕けになった敵勢を押し込み、徐々に陣形を切り崩す。
そこに遊撃隊の俺達も加わり、少々暴れた頃合いで
「素直に都市へ戻らないのは何故でしょう?」
「追って来ないと、
仮に追撃した場合、駐留軍本隊が撤退した先から引き離され、余計な時間を喰ってしまう。
故に追撃などあり得ないと、そう見込んでいるのを経験が浅い副長に伝えていたら、救護班を引き連れた吸血姫が歩み寄ってきた。
「むぅ、とっても仲が良さげね……」
「はわゎ、そんなこと無いですよ」
「本当なの、クラウド?」
「あぁ、戦術
「確かに私情で時間を浪費して、アリエル達を危険にするのは馬鹿らしいわ」
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人物紹介 No.11
氏名:クレイド・ガルフィス
種族:人間
兵種:
技能:身体強化(中)
大剣術・弓術・馬術
初級魔法(土)
軍団指揮
戦況把握
称号:副旅団長
辺境伯嫡男の御守り役
武器:大剣(主)
武装:板金鎧 腕盾
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