第九話 多分、私の膝枕は柔らかいわ
致し方無いので言葉を紡ごうとしたら、
「さっきから思ってたけどさ、誰なの?」
「先日より、吸血公の
「ふ~ん、新入りね……」
少々
居心地が悪いのを我慢して付き合うこと数秒、俄かに表情を
「ふふっ、結構な場数を踏んでそうね。強い奴は嫌いじゃないし、今夜眠る場所が無ければ、私の天幕に泊めてあげても良いよ」
「何というか… 自由奔放だな、アリエル殿は」
「別に呼び捨てで構わない、
気安く掛けられた言葉で自身が
やや不機嫌そうなエルザが言葉を紡ごうとするも、
「この若造、
「ん、そうね… 三騎士の一席が欠けていると、領軍の士気は上がらないし、クラウド殿が領兵を指揮する根拠もないから、私に剣を捧げて貰えると凄く嬉しいわ」
「誠意宣誓なんて柄じゃないが、目指す先を
「…… 本当、軸はぶれないのね」
微かに苦笑した吸血姫が剣柄を握り締めて、俺が水平に
最後に少しだけ下がって、抜き身の得物を鞘へ納めた。
「こんなもので構わないか?」
「ん、問題ないわ、吸血騎士のクラウド殿」
「
「まぁ、良いんじゃない、色々と事情もありそうだし」
言動が対照的な二人の
「爺さんが考えていた南東領の遊撃戦に混ざる案より、断然面白そう!」
「業腹だが、血を流すなら我らが故郷のためで在るべきか… 兵達も
堅物
ただ、地図に駒を並べて延々と議論しても、実際の戦場では上空から盤面を
それは黒い靄状の翼を形成して、短時間の飛翔ができる吸血鬼族も同様なので、過度に緻密な戦略を立てると自滅の憂き目に遭う。
ほど良く意見が出揃ったところで、聞き手に廻っていたエルザが場を取り仕切る。
「これで話は纏まったようですね、宜しく頼みます」
「「すべては純血たる御身の為に……」」
突然呟かれた御約束らしき言動に乗り遅れ、唖然としている内に起立した
「その…… ごめんなさい、古い慣習なのよ」
「あぁ、でも、アリエルまで踏襲するんだな」
「ん~、いつもは言わないし、新参者への
さらりと告げられた事実に溜息を吐き、椅子の背もたれに身体を深く預ける。
その姿に哀愁を感じたようで、天幕内の
「どう? 私の膝枕は柔らかいわよ、運動不足で駄肉が付いているから、あうぅ」
「普通に蠱惑的な身体つきだとは思うが……」
数日前、ディガル部族国の首都イグニッツで見世物にされていた半裸姿のエルザを脳裏に浮かべてしまい、雑念は不要とばかりに追い払う。
俺が心頭滅却を
「出会って以来、ずっと世話になっている御礼がしたいの、はしたないと思われるかも知れないけど……」
「いや、思わないさ、厚意に甘えさせて貰おう」
押し問答になりそうなので、こちらが折れることにして吸血姫の隣へ座り、
「んぅ」
「確かに柔らかいな」
優しい手付きで髪を
「本当に疲れが溜まっていたか、体調管理もできないとは、傭兵、失格だ… な…」
「お休みなさい、クラウド。貴方が無意識に求めている
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