第22話 幼馴染の敵意は女性へ1
瑠理がパソコンの設定と打ち合わせで、栗原専務が配信環境の確認で俺の家へ来てくれた。
菜乃もカルロスの対決相手という名目で一緒だ。
しかし、玄関ドアを開けるとなんと出てきたのはカレン。
想定外に驚く俺、カレンの方も一緒なのが瑠理だけではないので驚いている。
「ああ、みなさんいらっしゃい。さあ、どうぞ」
「こ、こんにちは」
母さんだけじゃなく、制服姿の真利も出てきてみんなを出迎えた。
どういうことだ?
母さんにはちゃんと、事務所の人と仕事の話をするって説明したのに。
幼馴染みだからって、カレンを家へあげたな?
どうすんだよ、コレ……。
カレンの前じゃ、Vtuberの話ができないぞ。
いつまでも固まっていては玄関が大渋滞のままだ。
パソコンがすでに届いたのか、大きな段ボール箱2つが玄関に置いてあって狭い。
栗原専務が母さんに挨拶したいと言うので、とりあえずリビングへみんなを案内する。
「株式会社ルアーの栗原と申します。今日はタレント事務所、カワイイ総合研究所の件で来ました」
「は、はい。健太の母です」
栗原専務が名刺を差し出すけど、母さんはパートなので名刺なんか持っておらず、ただ受け取るだけだ。
「なにそれー、カワイイ総合研究所だってー! 変な名前ー、オタクっぽー!」
カレンがいつにも増して失礼なことを言う。
俺の客だと思ってか、あまりに酷い態度だ。
だが、いくらカレンでも初対面の相手にここまで酷いのは初めてだと思う。
なんだか挑戦的な目付きだし。
菜乃と瑠理がじろりとカレンを睨む。
自分が所属してお世話になっている場所を笑われたら、気分が悪くなって当然だ。
美女たちが並んで冷たい視線を送ったので、さすがのカレンでもひるんだ。
栗原専務が俺の方へ来る。
「中村さん、彼女は?」
「幼馴染みの美崎カレンです」
俺がカレンを紹介したら、彼女が割り込んだ。
「健太の家に栗原がパソコン設定で来るって話、学校で聞こえたんだー。だから栗原の邪魔しに来たのよ! なのに、ひ、姫川まで来ちゃってるしさー。あんた、私の健太になに手ぇ出してんのー?」
は、はあ~??
おいおい、カレン……。
おまえ一体、何を言い出してんの?
私の健太ってどういうことだよ!?
自分から距離を置きたいって言ったんだろ!
「あ、あのカレン? 急に何を言って……」
「だいたい、こんなに女連れ込んでる健太が一番最悪なんだしー」
もしやカレンは俺が女子に見境なく手を出してると、そう誤解してんのか?
確かに事情も知らず、この状況を見たら誤解するかもだけど……。
でも幼馴染みだからって、行動を制限するのはおかしいだろ!
彼氏彼女の関係でもないんだし。
それ以前に俺の客に対して失礼過ぎる!!
「連れ込むも何も、彼女らは大事なお客さんだ! 遊びで来てもらってるんじゃないんだよ!」
「はあ? あんたみたいなモブ男が女連れて、いい気になってんじゃないつってんの!! 今まで通り、私にだけ盲目的に従ってればいいのよ!」
モ、モ、モブ男……。
うう……言い過ぎだろ……。
いくら何でもおまえ、それは言い過ぎだろッ!
カレンは俺の客に失礼な態度を取ったばかりか、みんなの前で俺をモブ男呼ばわりする始末。
彼女のあまりの振る舞いに、俺は声も出せずに立ち尽くした。
「カレンちゃん、みんなの前でそれはちょっと!」
見兼ねた母さんがカレンを制するが、彼女はまったく動じなかった。
「おばさん! これは健太が招いた事態なの! 連れて来たのが女ばっかりなのを見ても分かるでしょ!」
カレンの言葉を聞いた母さんが、俺の周りのみんなを見て黙った。
マズいな、母さんがカレンの話を真に受けてる。
母さんから見れば、カレンはよく知った幼馴染みだし、連れて来た女性比率が異常なのはその通り。
菜乃に瑠理、それと栗原専務。
客は全員女性、しかも美人ばっかり。
元から家にいたカレンと、関係ない親戚の真利も入れると、母さんから見て女5人に男は俺1人。
一見異常な男女比率だ。
Vtuberや事務所の話がもう一つ飲み込めない母さんなら、幼馴染みのカレンの訴えを鵜呑みにするのかもしれない。
母さんが自分の側についたと思ったのか、カレンが勝ち誇ったような顔をする。
「さあ! 健太をそそのかすメス猫ども、さっさと帰りなさいよッ!」
腰に手を当ててカレンがふんぞり返った。
俺はできるだけ彼女を刺激しない丁寧な言葉で、だけど迷いなくハッキリした口調で伝える。
「カレン。もう一度言うが、彼女たちは俺の大切なお客さんなんだ。今から大事な打ち合わせがある。今日は帰ってくれないか」
だがカレンは、丁寧に話す俺に対して数回手の甲で追い払うようにする。
「健太ー。あんたには言ってないんだけど? っていうか私に向かって偉そうに意見すんな!」
……ダメだ。
元から自己中だが、こうなったカレンはもう話を聞かない。
相手が男ならぶん殴って謝罪させるが、相手は幼馴染みの女子だ。
もうどうすればいいか……。
「私に任せて!」
話の通じないカレンに困り果てたところで、瑠理が俺の前へ出たのだった。
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