青い目のうさぎ
藤間伊織
第1話
白を基調とした部屋で白衣を着た男と若い男が向かい合って座っている。
若い男が口を開く。
「先生、今日は話すことが決まっているんですよ。あ、今『珍しい』って思いましたか?まあ、そうですね。確かに今日はいつもより気分がいいです。
それもこれも今から話すあの美しい『夢』が関わっているんです。
昨日の夜、いや今朝なのかな。とにかく夢を見たんです。僕は月にいて、一人で立っていました。暗い宇宙の中、青く輝く地球が幻想的でとても綺麗だったなぁ……。
それで、3メートルくらい離れた場所にうさぎが一羽いたんです。横から見たその頭は楕円に近い形で、目から鼻にかけて丸かった。なんというか全体的に立体感がなくて子供の絵みたいだな、と思いました。僕の夢ですけど。口も歯もないので実質耳の長さだけでうさぎだと判断したことになります。そのうさぎは地球の方を見ていて、僕なんかにはまるで気づいていない風でした。でも、僕はそのうさぎから目を離せませんでした。そのうさぎの眼がとても不思議だったのです。顔の大きさとの割合的に少し大きくて、くりくりしている。何より僕が惹かれたのはその眼の色です。深海を思わせる暗い青色で、もう少し近くで見つめたら吸い込まれそうだと思いました。長いまつげもキラキラしていてよく似合っていた。
しばらくそうして見つめていたのですが、気がつくとうさぎは消えていて慌てて今までうさぎがいた場所を見に行こうとしたところで目が覚めました」
話を聞いている間、白衣の男はずっと机の紙に何かしらを書き込んでいた。話が終わるとボールペンを持ったまま、若い男にいくつか質問を投げかける。健康状態とか、近況報告とか、軽い雑談といった感じだった。それも終わるとようやく白衣の男はボールペンを置き、二言三言言葉を交わし若い男は部屋を出て行った。
出ていく前、若い男は振り返って白衣の男に言った。
「次に同じ夢を見たら、僕はあのうさぎをもっとじっくり、正面から見てみたいです」
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