第28話 連携訓練 1

時は過ぎて魔王討伐まであとひと月余りと迫っていた。

勇者として鍛錬を続けるスカーと、勇者のサポートをするための訓練を重ねるアーベルであったが、中々呼吸が合わずに連携がぎこちない場面が目に付く。


「おい、お前もっとうまく動けよ!」


「すまない……もう一度頼む……」


悔しそうにアーベルへ謝罪するスカー、いまだ慣れない戦斧という武器種という事に加え、

アーベルに合わせた動きが上手くできずに焦っているようだ。


「……」


そんな二人の様子を見ていたエドワードとアドルファスは、目線だけで意思の疎通をはかったようである。


「今から私達二人でお相手しましょう。 死んでも蘇生してあげますから安心してくださいね? さぁ!行きますよ」


「えっ? ちょっと」

「は?」


エドワードの合図で鍛錬が始まる。

よく見るとアドルファス達二人の持っている武器は、模擬戦用ではなく真剣であった。


「ふぅー……(集中しろ……)」

深呼吸をして精神統一をするアーベル。


「アーベル!よけろ!」


その一瞬のスキをついて神速のごとき速さでアーベルへ迫るアドルファス、アーベルは上段から振り下ろされるアドルファスの剣を防ごうとしたが、間に合わないと悟ったのか咄嵯に後方へ飛び攻撃を回避しようとした。


「甘ぇよ!」


しかし、完全に回避することは出来ずに、そのまま蹴りつけられてしまう。


「くそっ!」


すぐさま体勢を整え反撃に転じようとするが、すぐさま体勢を整え反撃に転じようとするが、すでにアドルファスに間合いに入られている。


「遅いんだよ!」


「うわぁー!!」


容赦のない一撃をくらい吹き飛ばされるアーベル。


「アーベル!大丈夫か!?」


慌てて駆け寄るろうとするスカーであったが、エドワードがそれを許すはずもなく動きに翻弄されるばかりであった。


「おい……アーベル!」


倒れたまま動かないアーベルを横目でみて、愕然としている。


「おやおや……まさかこれで終わりではないですよね?

私も暇ではないので、さっさと打ち込んできなさい!」


「くそぉー!!!」


エドワードの挑発に乗り、雄叫びをあげながら突撃していくスカー。


「やれやれ……そんな単調な動きでどうするのです? ほら、足元がお留守になっていますよ?」


そういいながらエドワードは軽く足払いをした。


「うおっ」


不意をつかれた形になったスカーは、そのまま地面に倒れこんでしまう。


「ぐぅぅ……」


「まだまだですよ!」


そういうとエドワードは容赦なく追撃を仕掛ける。


「ちょっ、まっ」


なんとか防御しようとするが、エドワードの攻撃を防ぐことができない。


「うわぁー!!!」


エドワードの攻撃を喰らい続け、エドワードは気絶してしまった。


「スカー……ちっくしょ……」


こちらもアドルファスにボコボコにされたアーベルが気絶してしまう。


「各々の動きは悪くないのですがねぇ……」


「あぁ……スカーがアーベルに遠慮しちまってるせいで連携が全く取れてねぇ」


「とりあえず傷を治してから、『例の部屋』に放り込んでおきましょうかね」


その言葉にアドルファスが嫌な顔をしながら


「それ、ババアがジジイの話聞いて作ったとかいう『設定どおりの行動ができないと出してもらえない部屋』とかいうやつか?」


「えぇ、最初はアンタとかマサタカ師匠のお仕置き用に作り始めてたらしいですが、『時間停止機能』をつけるのが案外難しかったとかで最近出来上がったそうですよ」


「あのババアとうとう時間まで操るようになったのかよ……そのうち上位者の命令で封印とかされんじゃねぇか?」


「さすがに、その辺の匙加減を間違えるお師匠様じゃありませんから心配いりませんとも!」


と何故か誇らしげに胸を張るエドワード。


「あぁそうかよ……」


聞いた事を後悔するアドルファスであった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


※エドワードが『蘇生してあげます』などと言っておりますが、実際に使えるわけではありません、唯の挑発的脅し文句です。




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