第26話 食堂での再会
「マーサ!」
バン!と開けた食堂のドアの先には、ビックリした顔のミルフィーとマーサ、そしてエドワードが食事の準備をしていた。
「ぼっちゃま……大きくなって……またお会いする事が出来てマーサは嬉しゅうございます……」
感極まって泣き出すマーサを優しく抱きしめるスカー。
「俺も会えて嬉しいぞ、マーサ……」
その様子を見ていたミルフィーが
「あにーえ! マーサいじめないでぇ……」
と半泣きになっている。
「ちっ、違うぞミルフィー! とても長い間会えなかったから嬉しくて泣いてしまったんだよ!」
慌てて言い訳をするスカー、それを聞いて
「マーサうれしいの?」
とキョトンと首をかしげながらマーサのエプロンを引っ張る、その様子にマーサは涙をぬぐいながら
「はい、ミルフィー様。マーサはとても嬉しかったのですよ」
と答えた。
「そっかー」
とニコニコ笑うミルフィーに、食堂の空気も和むのであった。
「ところでマーサ、どうしてここへ?」
実は……」
と、マーサはスカーへ経緯を説明する。
「そうだったのか……聖人様、またマーサに会わせてくださったこと感謝いたします」
「礼などいりませんよ、バーガ国王と王太后様お二人のご推薦で決まったのですから」
「そうだとしても、マーサを説得して下さったことに変わりありません。きっとマーサ以上にミルフィーの養育を任せられる人間は他にいないと私も思います。マーサ、ミルフィーの事よろしく頼む」
「この命に代えても必ずや」
そう言って深々と頭を下げるマーサ。
「さぁ、準備はできていますから食事にしましょう」
エドワードがそう言葉をかけるのと同時にアドルファスが、パースとアーベルを連れて食堂へ入ってきた。
「おう、連れてきたから早くメシにしようぜ」
と言いながら席に着く。
「あ、アドルファス様……私どもは使用人でございますから」
そういって遠慮しようとするパースへエドワードが声をかける。
「申し訳ありませんが、片付かないので食事は皆でとるようにお願いしますね、なにせ人手がほぼない館なもので」
「……左様でございますか……」
困惑するパースへ
「父上、そう言われてんだからさっさと食べましょう。腹が減りました!」
そういうと、さっさと席について食事を始めようとするアーベル、それを見たスカーも
「確かに空腹だな、さぁ、みなも一緒に食べるぞ」
と声をかけ
「ではありがたくいただきます……」
とみな席に着くのであった。
◆◇◆
……食後のお茶を飲みつつ、今後の事を話し合う一同。
「まずはミルフィー王子」
と話し出すエドワード
「はいっ!」
「今日からこのパース殿がミルフィーのお勉強を見てくれます」
「おべんきょ! する!」
「毎日少しづつがんばっていきましょうね」
「はい!」
「続いてスカー殿下」
「はい」
「殿下は本日は、斧を使った鍛錬も入れてみましょう。それとアーベル殿との組手を含んだ模擬戦もしていただきます、アーベル殿もよろしいですね?」
「……わかりました……」
「夕方からは、お二人に軍略と指揮系統についての勉強もしていただきます」
「はい」
「は? 聞いてねぇけどそんな話!」
アーベルがエドワードへ突っかかる。
「おやぁ……? 騎士見習いの坊ちゃんは、武器をふりまわしてりゃあ騎士の仕事ができるとか思ってる口かぁ?」
ニヤニヤしながらアーベルを挑発するアドルファス。
「なんだとぉ!馬鹿にしてんのかオッサン!」
そう言うと腰の剣に手をかけるアーベル。
「おい!馬鹿!だめだアーベル!」
エドワードの顔をチラ見しながら、あわてて止めるスカー。
「おらおら、かかってこ……」
パチン、と指を鳴らす音と共に一瞬で簀巻きにされたアーベルがカーペットの上に転がる。
「アーベル殿には、根本的な学習の方が必要なようですね。申し訳ありませんがご子息をお借りしますよ?」
そう言うとエドワードは見たものが凍り付きそうな笑顔で、簀巻きアーベルを浮かせて部屋を出て行った。
「愚息が大変失礼なまねを……」
そう言いながらアドルファスへむかって夫妻で頭を下げる。
「なーに、あの聖人様は、じゃじゃ馬の扱いは超一流だからまかせておけって」
と
「あにーえ、みるふぃも、せいじんさまとあそぶーー」
とスカーのシャツの裾を引っ張って、一緒に行こうとする。
「あれは……遊んでるわけじゃなくてだな……」
「なんだ? ボウズもお空とびたいのかぁ?」
「うん!」
「なら……こうだ!」
そういいながら、アドルファスはミルフィーを抱えてひょいと空中で軽く投げ上げる。
「キャー お空飛んでる!」
なんなく落ちてきたミルフィーを抱えなおし、マーサへ手渡すアドルファス。
「おじちゃ! もう1回してー!」
「お勉強頑張ったらまたやってやるよ」
「わかった!マーサ!おべんきょ早くいこ!」
と急かすミルフィーであった。
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