第23話 深夜の話し合いと乳母マーサ
深夜の子供たちが寝静まった館の談話室では、オッサン二人が酒を飲んでいる。
「そういえば、加工するって言った逆鱗どうすんだ? それで勇者の剣(笑)つくる予定だったんだろ?」
「そうですねぇ……予定通り作っても良いのですが、キントキさんのくれた斧のほうが数倍性能がいいんですよね……」
「あぁ、そりゃそうだわな」
「うーん……盾でも作ってもらいましょうかね」
「剣と斧の二刀流って手もないわけじゃねぇがなぁ……アイツに向いてるともおもえねぇんだよな……斧だけじゃダメなのかよ?」
「いえ、あの斧なら十分すぎるほどですよ。ただ、やはり勇者には聖剣が必要でしょう?」
「まぁ、イメージとしてはそうかもしれねぇけどよ……別に斧の勇者でもいいだろ」
「それはそうなんですが……やはり魔王を倒すためには、伝説の武器がほしいじゃないですか」
「そんなロマンチストみたいなこと言ってねぇで、さっさと今後の計画たてろや!」
「まったく……わかってますよ。とりあえず城の掃除はある程度目途が立ちましたので
問題ありません、後はミーツ王子と接触を図りつつ……といったところでしょうか」
エドワードの言葉を聞き、グラスを置いて考え込むように腕を組むアドルファス。
「その王子使いもんになるのかよ? スカーの矯正したほうが早いんじゃねぇのか?」
そう言うと、再び酒を飲み始める。
それをみて、苦笑いしながら答えようとするエドワードだったが、扉をノックする音に遮られる、入ってきたのはスカーだった。
「ご歓談中申し訳ありません、ミルフィーが……」
そう言いながら、腕に抱えていたミルフィーを困ったように見る。
ミルフィーはグスグスと泣きながらも眠っているようだ。
「おやおや、これはいけませんね」
そういいながらエドワードは、ミルフィーを受け取り抱きかかえる。
ブランケットをかけ、トントンと背中を軽く叩きながらあやしていく。
その様子をみている二人に視線を向けると、 少し思案して口を開く。
その顔からは笑みが消えており、真剣な表情になっている。
「やはり、まだまだ不安定ですね。この子は私が見ますから、スカー殿下は心配せずに、ゆっくりおやすみなさい」
エドワードはスカーを安心させるように、そう言い残すと部屋から出ていった。
そのあとを追うように、スカーはアドルファスへ頭を下げて退出していった。
◆◇◆
次の日の朝、日の光に誘われるように目を開けたミルフィーは部屋に誰かいるのに気付いた。
寝ぼけ眼で窓を見ると、そこには白髪の女性がカーテンを開けている。
「おや、ミルフィー様、お目覚めでございますか?」
女性は優しく微笑むとミルフィーの方へやってくる。
「おはよう……だれ?」
「はい、おはようございます。 わたくしは今日からミルフィー様のお世話をさせていただくことになりました、マーサと申します」
「……えっと……よろしく……お願いします」
「はい、こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
そう言ってほほ笑んだ。
「では、まずは身支度を整えましょうか」
「……うん」
「では、失礼致します」
そう言うと、ミルフィーを着替えさせ始める。
「あのね……せいじんさまどこ?」
「聖人様は、食堂の方でお待ちになっていますよ」
微笑みながらマーサは答える。
その言葉に、ぱぁぁっと笑顔になったミルフィーは
「マーサ!はやく食堂いこ!」
と急かす。
「はい、ミルフィー様、すぐに終わりますので、少々おまちくださいませ」
そう言うと、手早くミルフィーの身だしなみを整える。
「さあ、これで大丈夫ですよ」
「じゃあいこ!」
そう言うと、ミルフィーは部屋を出て走り出す。
その様子に慌てて
「廊下を走るとあぶのうございますよー!」
とマーサが後ろから声をかけるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます