第8話 魔王1
どこかの屋敷の中へ転移したエドワード達は早速スカーを床に転がし縄をほどく。
「この小僧はどうすんだ?」
「とりあえず片が付くまで2,3日は目覚めないようにしておきましょうかね」
と、エドワードは寝台へと運んでいきスカーを寝かせてやる。
「で、このまま行くつもりか?」
「さすがに少し疲れましたので明日決行しましょう」
そう話しながら2人は別室へを足を運び、まるでたった今用意されたばかりのような温かな食事が並んでいるテーブルに驚くこともなく椅子に座り食事を始める。
「あのババア他にいくつこんな
「さぁ……私が知っているのはこの家だけですよ」
そう言いながら食事へと手を伸ばした……。
「で、場所は分かってんだろうな?」
「アンタが持ってきた『勇者の剣』が反応してますから多分直接『飛べ』ますよ」
その言葉にアドルファスは渋い顔で
「それってやっぱり『同じ魔王』って事なんじゃねぇのかぁ?」
と問いただす。
「おそらくですが中身……と言っていいのか分かりませんが同一人物?なんじゃないですかね……『魔王も管理者側のモノ』だと仮定すれば納得できてしまいますね」
エドワードも難しい顔で同意する
「はぁー……力の循環システムも兼ねた舞台装置の一つってやつかよ……めんどくせぇ……」
「効率を最優先に考える『管理者』らしいんでしょうけど事情の一端を知ってしまった身としてはなんともいえないところですね……」
ため息まじりのエドワードの言葉にアドルファスも
「まったくだぜ、しかし現地人の話聞く限りじゃかなり長い間討伐できてねぇって事は、その間に力がため込まれたまま魔王が強化されちまうんだから、結局力の循環が上手くいってねぇし完全に破綻してんじゃねぇのか?」
と腕を組んで首をひねる。
「確かにそうかもしれませんね、……そうなると私達の世界へ召喚の力働いた理由も分かる気がします。まぁもっとも『この世界の勇者を勝たせる為』ではなく『システムリセット』の為に呼ばれた気がしますけどね」
エドワードはそうつぶやくように言ったのだった。
◆◇◆
そして次の日の朝早く、聖人エドワードが王太子を連れて姿を消したという噂で持ちきりになる王宮内。
そんな騒ぎの中、国王と将軍だけが極秘裏にひっそりと話し合っていた。
「……それで聖人様達はからなにか連絡はございましたかな?」
「いや……今のところはなにもないな……しかし今代の聖人様は中々一筋縄ではいかぬ御仁だな、こちらの思惑をすべて超えてくる」
「そうですなぁ……しかしあのような方にこそ、この世界の命運を託すべきなのでしょうな」
「そうかもしれんな……ところであのユイカという娘は隔離できておるのか?」
「ご命令通り騎士に離宮へと連行させてありますので問題ないでしょう」
「そうか……ならばよい、当分は些事にかかわれるような状況ではないからのう……それで隣国からの物資の輸送だが……」
◆◇◆
国王と将軍がのんきに会話している頃、エドワード達は既に目的の場所へと到着していた。
そこは広大な砂漠と、砂嵐が吹き荒れる岩山と岩陰以外何も無い、人が住むには過酷な土地であった。
「……随分なんもねぇとこだな」
そう問いかけるアドルファスに
「いえ……この場所のほうがかえって魔王にとって都合がいいんですよ。ほら見てください、『地脈」から直接力を吸収しているようですよ」
と、指さす方向では地面に大きな亀裂ができていてそこから莫大な量の魔力が湧き出して渦巻いていた。
「なんだ?ありゃ?」
「あれがこの地の底を流れる『地脈』です。そしてあの渦巻いているのが『龍穴』と呼ばれている場所で、あそこで生み出されてる力を吸い取っているんです」
「マジかよ……すげぇな!」
その壮大な光景に目をキラキラさせてはしゃぐアドルファス。
「まぁ、気持ちはわかりますが緊張感のかけらもありませんねぇアンタ……」
あきれた顔でアドルファスを見てつぶやくエドワード。
「うるせーよ、それより早く行こうぜ!」
「はいはい、そうですね」
そう言いながらエドワード達は魔王へと向かって歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます