(8)

「でも……探すって言っても、GPS付きの発信機は使えないですし……」

「何とかなります。『お客さん』の何人かに『護法』を取り憑かせてますから」

 姐さんは「教授」に、そう答えた。

 「護法」とは「護法童子」の略で……陰陽道や西洋魔術で言う「式神」「使い魔」「守護天使」みたいなモノだ。

 そして、姐さんは床に座り……孔雀明王経を唱え始める。

 だが……。

 姐さんの顔には怪訝な表情。

「変なモノが……」

「何すか?」

「『お客さん』は……多分、この船の甲板です……でも……」

「でも……何か有ったんすか?」

「私は『護法童子』を取り憑かせた『お客さん』が見てるモノが、ある程度は見えます。でも、それは一種の伝言ゲームです」

 姐さんは、久米に、そう説明する。

「どう云うゆ〜事っすか?」

「『お客さん』の脳の視覚を司る部分の情報を『護法童子』が傍受して、更に私の脳に送ってる訳ですから……『お客さん』の目に写ってるモノが一〇〇%正確に『見えてる』訳じゃないです。もし、私が見慣れてないモノや、あまりに予想外のモノが有ったら、私はそれを『正体不明の何か』と認識してしまいます」

「なるほどね……案外、『魔法』ってのも……」

「『魔法』が本当に実在するなんて誰も思ってなかった頃は、『奇跡』と『魔法』が似たような意味で使われてましたが、実際の『魔法』は制約や不便な点が有るのを、職人芸で補ってるモノですからね」

 うげっ……。

 耳がいてえや……。

 一応は「魔法使い」の筈の俺が苦手だったのが……その辺りだ。

 ああ、畜生。娑婆に居る頃、もっと真面目にやっとくんだった……。

「なるほど……じゃあ、甲板うえに行きますか……」

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